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竹の皮の飴包み
たけのかわのあめづつみ
作品ID61048
著者中野 鈴子
文字遣い新字新仮名
底本 「中野鈴子全詩集」 フェニックス出版
1980(昭和55)年4月30日
入力者津村田悟
校正者かな とよみ
公開 / 更新2025-05-28 / 2025-05-26
長さの目安約 1 ページ(500字/頁で計算)

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本文より


どのお菓子屋の店先もくじを当てる時のような人だかり
露店商人らは 飴市に限って軒を並べない
町の角 角に
雪があれば 雪の上
土が見えれば板を敷き
白木造りの大きな桶に 飴を山盛りにする
飴は大きな かたまり
コハク色を帯びて
黒ゴマがふりかかっている

小さな城下町
小一里向こうに国境の山々がずっとつらなる
北陸の丸岡の町に
年に一度 飴市がたつ

二月はじめのこの日は 毎年吹雪く
一里四方の村じゅうの家が
飴市へ 飴市へ出かけてゆく

飴売りも 飴買う人も 雪にたたかれ
人の絶え間がない
雪は 飴の上にも消えてゆく

飴売りは 出刃ぼうちょうで
カンカンと 飴の山をくずす
かたい飴のかけらが 雪にまじってはじく
飴は幅のひろいひろい竹の皮に包んでくれる

竹の皮の飴包み
家では みんな待っている
ワラグツが ゴムグツに
からかさが オーバーに
帰りは 電車にのっても
竹の皮の飴包み
昔古来の飴包み

今日は丸岡のアメ市じゃ アメ市じゃ
年寄りは子供にかえり
子供らは年寄りの言葉を受けて
「米で作ったアメじゃ これが本当のアメじゃ……」
孫も子も 口いっぱいにほおばってゆく



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