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十和田湖の裸像に与ふ
とわだこのらぞうにあたう |
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作品ID | 61060 |
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著者 | 高村 光太郎 Ⓦ |
文字遣い | 旧字旧仮名 |
底本 |
「婦人公論 第三十八巻第一号」 中央公論社 1954(昭和29)年1月1日 |
初出 | 「婦人公論 第三十八巻第一号」中央公論社、1954(昭和29)年1月1日(公立図書館の蔵書検索では「第三十九巻第一号」に修正されている) |
入力者 | The Creative CAT |
校正者 | きりんの手紙 |
公開 / 更新 | 2023-04-02 / 2023-04-05 |
長さの目安 | 約 1 ページ(500字/頁で計算) |
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銅とスズとの合金が立つてゐる。
どんな造型が行はれようと
無機質の圖形にはちがひがない。
はらわたや粘液や脂や汗や生きものの
きたならしさはここにない。
すさまじい十和田湖の圓錐空間にはまりこんで
天然四元の平手打をまともにうける
銅とスズとの合金で出來た
女の裸像が二人
影と形のやうに立つてゐる。
いさぎよい非情の金屬が青くさびて
地上に割れてくづれるまで
この原始林の壓力に堪へて
立つなら幾千年でも默つて立つてろ。