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ナショナリズムについての覚書
ナショナリズムについてのおぼえがき
作品ID61389
原題NOTES ON NATIONALISM
著者オーウェル ジョージ
翻訳者The Creative CAT
文字遣い新字新仮名
初出1945年
入力者The Creative CAT
校正者
公開 / 更新2022-04-26 / 2022-05-28
長さの目安約 45 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

 どこでだったか、バイロンはlongeurというフランス語を持ち出して、そのついでに、英国にはたまたまこの単語はないが該当する事物ならかなり存在する、とコメントしている。同じく、ここに一つの習慣的な精神の持ちようがある。今やそれは蔓延し、ほとんど全ての主題に関する我々の思考の上に影響を及ぼしている。それでいて名前がまだない。現存する最も近い代替品として選んだのは「国家主義」だった。だが、すぐわかるように、私はこの語を通常の意味では用いていない。とにかく、私が語ろうとしている情動は必ずしも常に国家、即ち単一の民族とか、単一の地理的領域とかいったものに付随するわけではない。それは教会や階級にも付随し得るし、忠誠を誓う対象を何一つとして持たぬ、何かに対する専ら否定的な感じでもあり得る。
「ナショナリズム」によって表そうとする第一は、人類をあたかも昆虫ででもあるかの如く分類できるとする、あらゆる思考習慣である。また、何百万何千万という人々の総体に「良」または「悪」のラベルを貼り付けることができるとする、あらゆる思考習慣である[*1]。だが第二に――こちらの方が遥かに重要なのだが――表そうとするものは、自らを一つの国家その他の集団と同一視し、その集団を正邪の埒外に置き、その集団の利益を増大せしむることを唯一の義務とみなす、その習慣である。ナショナリズムを愛国心と混同してはならない。通常、これら二つの単語はあまりに曖昧に用いられるため、定義はなかなかに困難だ。しかしこの二者の間には線を引かなければならない。なんとなれば二つの異なった、むしろ相反し得る理念を含有しているからである。私は「愛国心」によって特定の場所、特定の生き方への献身を表している。人はそれを世界一に違いないと信じているが、かといって他の人々にそれを押し付けようとは思わない。愛国心はその本質において防御的である。軍事においても文化においても。かたや、ナショナリズムは力への願望と分かち難く結びついている。ナショナリスト誰もが執着する目的、それはより大きな力への、より多くの威信への渇望だ。それは彼自身のためではなく、国家なりなんらかの集団なり、彼が己の人格を自ら埋没させようとするもののためなのだ。
 ドイツや日本その他諸国に見られた悪名高い明瞭なナショナリスト運動に当てはめている限り、以上は十分に明らかだ。我々が外部から観察し得るナチズムのような現象に直面してみれば、大概の者は同じことを述べるだろう。だがここで繰り返さなければならない。より優れた表現がないため止むを得ず「ナショナリズム」という語を使っているのだと。ここで用いている広義のナショナリズムは、次のような運動や傾向を含む。即ち共産主義、政治的カトリシズム、シオニズム、反セム主義、トロツキズム、および平和主義である。それは必ずしも一つの政府ないし国家への…

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