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わがままな子ども
わがままなこども
作品ID61396
著者グリム ヴィルヘルム・カール / グリム ヤーコプ・ルートヴィッヒ・カール
翻訳者金田 鬼一
文字遣い新字新仮名
底本 「完訳 グリム童話集(三)〔全五冊〕」 岩波文庫、岩波書店
1979(昭和54)年9月17日
入力者かな とよみ
校正者noriko saito
公開 / 更新2024-12-10 / 2024-12-11
長さの目安約 2 ページ(500字/頁で計算)

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本文より


 むかし昔、あるところにわがままな子どもがあって、おかあさんのしておくれとおっしゃることを、なんにもしませんでした。それだものですから、神さまがこの子どもに愛想をつかして、子どもを病気にかからせました。お医者さまはどうすることもできず、すこしたって、子どもは小さな寝台の上で息をひきとってしまいました。
 ところが、子どもがいよいよお墓のなかへうずめられて、その上に土がかけられると、いきなり、かわいい腕がにょっきりと出て、まっすぐに上へのびました。みんなしてその腕をなかへ入れて、その上に新しい土をかけましたが、なんの役にもたたず、かわいい腕は、なんべんでも、にゅうっと出るのです。
 これをきくと、おかあさんは自分でお墓へ行って、笞[#ルビの「むら」はママ]でその腕をぶたずにはいられませんでした。おかあさんが腕をぶってやりましたら、腕はひとりでになかへひっこんで、これで、子どもはやっと土の下で楽々となりました。

註 両親を打つと、死後に墓の中から手がはえるという俗信があります。第十六世紀の代表的職人詩人ハンス・ザックスの寓話詩「子どものしつけのおそろしい話」には、バイエルンのインゴルシタットのある家庭で、男の子を甘やかして育てたためにその子がわがままになって、母親をなぐったことがあり、その子が死ぬとお墓から手が出て、どうしてもひっこまない、そこで、大学の先生がたや坊さんたちの助言で、母親が出かけて行って、その手を笞で十八時間もなぐりつづけ、手が血だらけになったらやっとひっこんだ、という実話がうたわれています。



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