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みつばちの 女王
みつばちの じょおう |
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作品ID | 61420 |
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著者 | グリム ヴィルヘルム・カール Ⓦ / グリム ヤーコプ・ルートヴィッヒ・カール Ⓦ |
翻訳者 | 矢崎 源九郎 Ⓦ |
文字遣い | 新字新仮名 |
底本 |
「グリムの昔話(1)野の道編」 童話館出版 2000(平成12)年10月20日第1刷 |
入力者 | sogo |
校正者 | 木下聡 |
公開 / 更新 | 2024-02-24 / 2024-02-17 |
長さの目安 | 約 7 ページ(500字/頁で計算) |
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むかし むかしのことです。ふたりの王子が、ぼうけんのたびに でかけました。
ところが、王子たちは、すきかってなくらしを はじめてしまって、家へかえろうとはしませんでした。
そこで、おばかさん という名前の、いちばん下のおとうとが、兄さんたちをさがしにでかけました。おばかさんは、やっとのことで 兄さんたちをみつけました。
ところが、兄さんたちは、おとうとをばかにして、
「おまえみたいなまぬけが、世の中でくらしていくのは たいへんなことだぞ。おれたちは、おまえよりも ずっと りこうだが、そのおれたちでさえ、うまく やっていくことが できないんだからなあ。」と、いいました。
それから、三人で そろって でかけました。
やがて、ありのとうの あるところへ、やってきました。
「どうだい、この ありのとうを、ほじくりかえしてやろうじゃないか。そうすりゃ、ちっちゃい ありのやつらは、びっくりして、はいまわったり、たまごをはこびだしたりするぞ。そいつをけんぶつしてやろうぜ。」と、兄さんたちがいいました。
ところが、おばかさんはいいました。
「生きものは、そっと しておいてやってよ。兄さんたちが、ありをいじめたりするのを、ぼく みちゃいられないよ。」
それから、三人は、また さきへあるいていきました。やがて、みずうみにでました。みると、みずうみには、それはそれは たくさんのかもがおよいでいます。
「ようし、あいつらを二、三羽 つかまえて、やき鳥にしてやろう。」
と、兄さんたちが、また いいだしました。
けれども、おばかさんは しょうちしません。
「生きものは、そっと しておいてやってよ。兄さんたちが かもをころすのを、ぼく みちゃいられないよ。」と、いいました。
とうとう 三人は、みつばちの巣のあるところへ、やってきました。みれば、巣のなかには みつがいっぱいあって、それが、木のみきをつたわって ながれています。
「そうだ、あの木の下で 火をたこう。そうすりゃ、はちのやつは、いきがつまって 死んでしまうから、みつがとれるぞ。」
と、兄さんたちは、しきりに いいました。
けれども、おばかさんが、またまた 兄さんたちをとめて、いいました。
「生きものは、そっと しておいてやってよ。兄さんたちが、はちをやきころしたりするのを、ぼく みちゃいられないよ。」
とうとう しまいに、三人のきょうだいは、しらないおしろへ やってきました。
ところが、このおしろには、馬やにも 石の馬しかおりません。それに、人間のすがたも、どこにもみえないのです。
三人は、広間を、つきつぎと とおりぬけて、いちばんおくの とびらのまえにきました。とびらには、じょうが三つ さがっていました。とびらのまんなかには、小さなよろい戸があって、そのよろい戸から、へやのなかがみえました。
み…