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じんこうえいせいのはっしゃち |
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| 作品ID | 61455 |
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| 著者 | 中谷 宇吉郎 Ⓦ |
| 文字遣い | 旧字新仮名 |
| 底本 |
「百日物語」 文藝春秋新社 1956(昭和31)年5月20日 |
| 入力者 | 砂場清隆 |
| 校正者 | 木下聡 |
| 公開 / 更新 | 2026-07-11 / 2026-07-11 |
| 長さの目安 | 約 2 ページ(500字/頁で計算) |
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この前、ソ連の人工衞星計畫のことを書いたが、アメリカのこの計畫も着々進行しているようである。
最初の人工衞星は、一九五八年の十二月までには、發射する計畫になっている。即ちこれから三年内には、實行されるわけである。人間はもちろん乘せず、小型のものであるが、いろいろな自動觀測機械を乘せるので、今まで全然未知であった空間(スペース)の知識が大いに得られる見込みである。
映畫カメラを設備するそうであるから、巧く行けば、地球の外から地球を眺めた景色が見られるかもしれない。そういう映畫だったら、どんな無理をしても是非見たいものである。地球の外から地球を見るなどということは、人類創成以來初めての事件で、よい時代に生まれ合わせたものである。
この計畫の實施について、アメリカのロケット協會の主催で、專門家の會議が、三日間、シカゴ郊外のノース・ウェスタン大學で開かれている。その會に集まった人たちの意見では、フロリダ州のマイアミの近くにあるココアという地點が、發射地として一番條件が備わっているということになったようである。空軍の誘導ロケット彈の試驗地のあるところで、そこが選ばれたらしい。
ロケット協會の事務局長ハーフォード氏は、この發表に附け加えて、多年の苦心を物語っている。二十年前に、この協會をつくった頃は、馬鹿げた空想家の集まりとして、世間の嘲笑を買ったものであった。
現在の會員たちは、二十年前には、單なる宇宙旅行ファンに過ぎなかった。いわば熱にとりつかれた青年たちの集まりで、中には手製のロケットを三百フィートも打ち上げたというような勇敢な男もいた。手にやけどして親に叱られたり、巡査から禁止の警告を受けたり、散々な始末であった。
もちろん今度の人工衞星は米國政府の事業であるが、こういう民間の協會の多年にわたる活動が、人工衞星の實現に側面的な支援を與えたことは、認められるであろう。
もっとも本當は、やはりソ連との競り合いが、この計畫の實行を促進したのであろう。ハーフォード氏は、アメリカよりも一足お先に人工衞星をつくるというソ連の發表をけなして、あの計畫は間違いだらけだといっているが、それもどうか分らない。まず二十年來のロケット・マニアの言葉として聞いておけばよかろう。いずれにしても、三年のうちに決まることで、どっちが成功するにしても、非常に樂しみな話である。