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ソれんかんけいのきじ |
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| 作品ID | 61510 |
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| 著者 | 中谷 宇吉郎 Ⓦ |
| 文字遣い | 旧字新仮名 |
| 底本 |
「百日物語」 文藝春秋新社 1956(昭和31)年5月20日 |
| 入力者 | 砂場清隆 |
| 校正者 | 木下聡 |
| 公開 / 更新 | 2026-07-25 / 2026-07-24 |
| 長さの目安 | 約 3 ページ(500字/頁で計算) |
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アメリカの最大關心事は、もちろんソ連である。したがって毎日の新聞には、大なり小なりソ連に關する記事が出る。
今日のシカゴ・デイリイ・ニュースのトップ記事は、アメリカの農業關係者のソ連視察記である。ウクライナからシベリヤにおよぶ九千マイルの農業地帶を、かなり自由に見て回り、寫眞を撮ることも許されたので、アメリカ人にとっては、大きいニュースである。というわけは最近のソ連のいわゆる微笑外交は、ソ連の食糧不足に由來している、というふうに一般に思われていたからである。
しかし今度の視察團の報告第一聲では「ソ連には食糧危機の兆しはない」というのが、重要項目になっている。ソ連が從來重視して來た集團農業が、豫期したほどの成果を上げなかったのは事實らしい。それで農家の個人經營を奬勵する傾向が出て來たといっているが、いずれにしても、ソ連の食糧危機というのは、一種のデマであったことになる。
この數ヵ月來、米ソ間の氣分が、大分やわらいで來ているが、この記事なども、國際緊張の緩和の方に、一役買う記事とも見られよう。
ところで面白いことには、米ソ間に友好的感情が釀されて來ると、それに對して文句をつける國が出て來たことである。同じ新聞の他の面に、ロンドン特派員の「モスコー平和政策、他國の共産黨員を怒らす」という記事が出ている。
英國の共産黨機關紙は、公然と書いているそうである。もしクレムリンの今度の平和共存政策が本氣であったとしたら、共産黨の世界政策はもうおしまいになってしまうであろう、というのである。
同じようなことをビルマ、イラン、インド、ユーゴースラビアなどの共産黨でも、いっているそうである。今度の政策が一時的なものであるか、あるいは政略的なものであるなら、それはよい。しかしもし永久的な政策だったら、今一度カール・マルクスを墓の中から呼び戻して來なければならないだろう。というのであるから、だいぶ引っ込みがつかない恰好である。事實、インドでは、ジュネーヴ會議のお蔭で、せっかく有望だった共産黨員が、選擧に落ちたという騷ぎもあった。
米ソ間に妥協がもし成立したら、一番困るのは、ソ連以外の共産黨である。というのであるから、世の中のことは、全く分からない。もっとも昔から、振り上げた拳固のやり場がないという言葉が日本にあるが、いささかその傾きが無くもない。いずれにしても、外國の態度だけで、簡單に左右されるようなことでは、一寸困るであろう。