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三まいの 鳥のはね
さんまいの とりのはね |
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作品ID | 61531 |
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著者 | グリム ヴィルヘルム・カール Ⓦ / グリム ヤーコプ・ルートヴィッヒ・カール Ⓦ |
翻訳者 | 矢崎 源九郎 Ⓦ |
文字遣い | 新字新仮名 |
底本 |
「グリムの昔話(1)野の道編」 童話館出版 2000(平成12)年10月20日第1刷 |
入力者 | sogo |
校正者 | 木下聡 |
公開 / 更新 | 2024-01-04 / 2023-12-30 |
長さの目安 | 約 9 ページ(500字/頁で計算) |
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むかし むかし、ひとりの王さまがいました。王さまには、三人の王子がありました。
ふたりの王子はりこうで、気がきいていました。ところが、三ばんめの王子は、ろくに口もきかない ぼんやりでした。それで、みんなから、おばかさん、とよばれていました。
王さまは、年をとって 体もよわってきました。これでは、いつ 死ぬかもしれません。
(わしの死んだあと、どの王子に、国をつがせたらよいのかな。)
と、かんがえてみました。でも、かんがえが はっきりときまりません。
そこで、王さまは、三人の王子にむかって、いいました。
「おまえたち、たびにいっておいで。だれでも よい。いちばん みごとなじゅうたんをもってかえったものを、わしの死んだあと、この国の王さまにしよう。」
王子たちが、どっちへいくかで けんかをはじめてはいけません。そこで、王さまは、三人を おしろの外へつれていって、鳥の羽を三まい、空へふきとばしました。
「いいかな。おまえたちは、それぞれ 鳥の羽のとんでいくほうへ、いくのだぞ。」
と、王さまはいいました。
一まいの羽は、東のほうへ とんでいきました。もう一まいは、西のほうへ とんでいきました。ところが、三まいめの羽だけは、まっすぐ 上にまいあがったのです。その羽は、とおくへとばないで、すぐ 地面におちてきました。
そこで、ひとりの兄さんは、右のほうへいきました。もうひとりの兄さんは、左のほうへいきました。兄さんたちは、おばかさんをわらいました。なぜって、おばかさんは、三まいめの羽の おちてきたところに、いつまでも いなければならないんですからね。
おばかさんは、そこにすわりこんで、しょんぼりしていました。ふと 気がつくと、羽のそばに、あげ戸があります。その戸をあけてみると、かいだんがついています。
おばかさんは、そのかいだんをおりていきました。すると こんどは、また べつの戸がありました。その戸を、ドンドンと たたくと、なかで、こんなことをいっているのがきこえてきました。
「あおい ちっちゃな、むすめさん、
しわくちゃばあさん、
しわくちゃばあさんの 犬っころ、
あっちも こっちも、しわっくちゃ、
外にいるのは だれだろ。はよ おみせ。」
戸が、すーっと あきました。みると、でぶでぶの 大きなひきがえるが一ぴき、すわっています。そのまわりには、小さなひきがえるが、うじょうじょ います。
「おまえさん、なにがほしいんだね。」と、でぶのひきがえるがききました。
「いちばん きれいで、いちばん じょうとうのじゅうたんが、ほしいんだけど。」
と、おばかさんはこたえました。
すると、でぶのひきがえるは、わかいひきがえるをよんで、いいました。
「あおい ちっちゃな、むすめさん、
しわくちゃばあさん、
しわくちゃばあさんの 犬っころ、
あっちも こっ…