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![]() おおかみと きつね |
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作品ID | 61532 |
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著者 | グリム ヴィルヘルム・カール Ⓦ / グリム ヤーコプ・ルートヴィッヒ・カール Ⓦ |
翻訳者 | 矢崎 源九郎 Ⓦ |
文字遣い | 新字新仮名 |
底本 |
「グリムの昔話(1)野の道編」 童話館出版 2000(平成12)年10月20日第1刷 |
入力者 | sogo |
校正者 | 木下聡 |
公開 / 更新 | 2025-01-04 / 2024-12-31 |
長さの目安 | 約 6 ページ(500字/頁で計算) |
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むかし むかし、おおかみが、きつねを、じぶんのうちにおいていました。
きつねは、動物のなかでも、たいへんよわい けものでした。ですから、おおかみのいうことは、なんでも、きかなければなりませんでした。きつねは、なんとかして、このしゅじんのところから にげだしたいと、おもっていました。
ある日のこと、きつねとおおかみは、ふたりで 森のなかをあるいていました。
そのとき、おおかみがいいだしました。
「おい、あかぎつね。なにか たべるものをもってこい。さもないと、おまえを ガリガリ たべちまうぞ。」
すると、きつねがこたえました。
「わたしは、子ひつじが二、三びきいる 百しょうやをしっています。もし、おのぞみでしたら、そいつを一ぴき、とったらどうでしょう。」
おおかみは気にいりました。そこで、ふたりででかけていきました。
きつねは、子ひつじを こっそり ぬすみだして、おおかみのところへもってきました。そして、じぶんは、そのまま さっさと、いってしまいました。おおかみは、ぺろりとごちそうをたいらげました。でも、まだまだ たりません。ほかのも ほしくなりました。そこで、ほかのもちょうだいしに、のこのこ でかけていきました。
ところが、おおかみのやりかたは、へたくそです。たちまち、子ひつじのお母さんに、みつかってしまいました。子ひつじのお母さんは、大声をはりあげて なきわめきました。それを お百しょうさんたちがききつけて、とんできました。
みんなは、おおかみをみつけると、さんざんに ぶったたきました。おかげで、おおかみは 足をひきずり、ヒーヒー なきながら、きつねのところへもどってきました。
「やい、きさま、よくも おれをだましたな。おれは、ほかの子ひつじも さらってこようと、おもったんだ。そしたら、百しょうどもにとっつかまってな。このとおり、体がぐにゃぐにゃになるまで、ぶちのめされたぞ。」
と、おおかみはいいました。
「あんたは、どうして、そう、くいしんぼうなんでしょうねえ。」
と、きつねはこたえました。
あくる日、ふたりは、また 野原へでかけました。
くいしんぼうのおおかみが、またもや いいだしました。
「おい、あかぎつね。なにか たべるものをもってこい。さもないと、おまえを ガリガリ たべちまうぞ。」
すると、きつねはこたえました。
「わたしは、ある百しょうやをしってるんですがね。そこのおかみさんが、こんや、たまごパンをやきます。そいつを とってやりましょうよ。」
ふたりはでかけていきました。きつねは、家のまわりを、こそこそ あるきまわりました。ながいこと、のぞいてみたり くんくん かいでみたりしてから、ようやく おさらのあるところを、みつけました。きつねは、そのおさらから、たまごパンを 六つだけひきずりおろして、おおかみのところへもって…