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きつねと 馬
きつねと うま |
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作品ID | 61533 |
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著者 | グリム ヴィルヘルム・カール Ⓦ / グリム ヤーコプ・ルートヴィッヒ・カール Ⓦ |
翻訳者 | 矢崎 源九郎 Ⓦ |
文字遣い | 新字新仮名 |
底本 |
「グリムの昔話(1)野の道編」 童話館出版 2000(平成12)年10月20日第1刷 |
入力者 | sogo |
校正者 | 木下聡 |
公開 / 更新 | 2024-09-04 / 2024-08-31 |
長さの目安 | 約 4 ページ(500字/頁で計算) |
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あるお百しょうが、とても よくはたらく 一とうの馬をもっていました。
ところが、馬は、だんだん 年をとって、とうとう はたらくことができなくなりました。すると、しゅじんは、たべものをやるのが、いやになりました。
「おまえは、もう、やくにはたたなくなった。それは、わしにも よくわかっているが、しかし わしは、おまえを かわいくおもっている。だから もしも、おまえが、まだここへ ライオンをつれてくるだけの 力をもっているのなら、かっておいてやることにしよう。だが、ひとまず、この馬小屋からでていってくれ。」
こう いって、お百しょうは、馬を、ひろい野原へ おいだしてしまいました。
馬は、しょんぼりと、森のほうへあるいていきました。森へいけば、雨や風を、いくらかはふせげるだろう、とおもったのです。
とちゅうで、きつねにであいました。きつねは、馬にたずねました。
「おまえさん、なんだって、そんなにうなだれて、さびしそうに あるいてるんだね。」
「ああ、あ。よくばりこんじょうってものは、やりきれんよ。いくら、こっちが、ま心をこめて つくしてきても、どうしようもないんだからなあ。
おれは、なが年のあいだ、しゅじんのいうとおりに、いっしょうけんめい はたらいてきた。
そりゃあ 今は、はたけ仕事はできないさ。しかし、しゅじんときたら、おれを、さんざん はたらかせてきたくせに、そのこともわすれちまって、くいものをくれるのがいやで、おれをおいだしちまったんだ。」
と、馬ははなしました。
「なぐさめてもくれないでかね。」と、きつねがたずねました。
「いんや。そのなぐさめかたが、また ひどいんだ。なにしろ、おれが、しゅじんのところへ、ライオンをつれてくるぐらい つよければ、かっておいてやろうって いうんだからな。おれに、そんなことができっこないぐらい、わかりきってるくせになあ。」
と、馬はこたえました。
「ようし、おれが手だすけしてやるよ。おまえさんは、そこへねころがって 手足をのばしていたまえ。ぴくりとも うごくんじゃないよ。死んだようにしてるんだぜ。」
と、きつねがいいました。
馬は、きつねにいわれたとおり、ごろりと そこにねころびました。
きつねは、ちかくのほらあなにいる ライオンのところへいって、
「おもてに、死んだ馬がいますよ。でてごらんなさい。うまいごちそうにありつけますよ。」
と、いいました。
ライオンは、きつねといっしょに でていきました。
馬のそばまでくると、きつねは、ライオンにいいました。
「ここじゃ、気らくにたべられませんね。よかったら、わたしが、この馬のしっぽを、あなたの体に しばりつけてあげますよ。そうすりゃ、あなたは、この馬を ほらあなのなかへひきずりこんで、ゆっくり たべられるってわけですよ。」
ライオンは、たしかに いいかんがえだ…