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うさぎと はりねずみ
うさぎと はりねずみ |
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作品ID | 61534 |
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著者 | グリム ヴィルヘルム・カール Ⓦ / グリム ヤーコプ・ルートヴィッヒ・カール Ⓦ |
翻訳者 | 矢崎 源九郎 Ⓦ |
文字遣い | 新字新仮名 |
底本 |
「グリムの昔話(1)野の道編」 童話館出版 2000(平成12)年10月20日第1刷 |
入力者 | sogo |
校正者 | 木下聡 |
公開 / 更新 | 2024-03-26 / 2024-03-17 |
長さの目安 | 約 9 ページ(500字/頁で計算) |
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みなさん。このおはなしは、うそみたいですけどね、ほんとうのおはなしなんですよ。わたしは、このおはなしを おじいさんからききました。
おじいさんは、はなしてくれるたびに、いつもいつも、こう いっていました。
「こりゃあな、ぼうや。まちがいなく、ほんとうのはなしなんだよ。こうよりほかには、はなしようがないんだからな。」
ところで、その おはなしというのは、こうなんです。
秋の、ある日よう日の 朝のことでした。ちょうど、そばの花がまっさかりでした。
お日さまは、空たかくのぼって、あかるく かがやいていました。朝風は、きりかぶの上を あたたかく ふいていました。ひばりは、空で 歌をうたい、みつばちは、そばの花のあいだで、ブンブン うなっていました。
村の人たちは、よそゆきをきて、教会へでかけました。
こうして、生きているものは、みんな いい気ぶんになっていました。はりねずみも、やっぱりいい気もちでした。
はりねずみは、じぶんの家の、戸のまえにたって、うでぐみをしていました。朝風にふかれながら、気もちよさそうに、ちょいとした歌を、口のなかで うたっていました。歌がうまくても まずくても、そんなことはかまいません。ともかく、はりねずみは、たのしい日よう日の朝には、いつも きまって、歌をうたうのです。
こうやって、ぼんやり ひとりで、小声でうたっていると、ふっと こんなことをおもいつきました。
(そうだ、今、かみさんが 子どもたちを、おふろにいれてやっている。そのあいだに、ちょいと はたけへさんぽにいって、かぶのぐあいを みてくるとしよう。)
そのかぶというのは、はりねずみの家の、すぐそばに ありました。はりねずみは、おかみさんや 子どもたちといっしょに、いつも そのかぶをたべていました。
それで、そのかぶはじぶんのものだ、とおもいこんでいたのです。
(いいことは、いそいでやるんだ。)
はりねずみは、おもての戸をしめて、はたけのほうへでかけました。
ところが、まだ、いくらも いかないときです。はたけのてまえにある 木のしげみのところを、かぶばたけのほうへ まがろうとしました。すると、そこで ばったり、うさぎにであったのです。
うさぎも、やっぱり、おなじようなようじで やってきたところでした。つまり、うさぎのほうは、じぶんのキャベツばたけを、みまわりにきたのです。
はりねずみは、うさぎのすがたをみると、あいそよく、
「おはよう。」と、あいさつしました。
ところが、うさぎときたら、いやに こうまんちきで、おえらいだんなのような つもりでいます。だから、はりねずみがあいさつしても、へんじもしません。
それどころか、ひどく ばかにしたような顔つきで、
「おいおい。いったい どうしたわけで、こんなに 朝はやくから、はたけのなかを、うろちょろしてい…