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![]() つちをまるくもった おはか |
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作品ID | 61535 |
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著者 | グリム ヴィルヘルム・カール Ⓦ / グリム ヤーコプ・ルートヴィッヒ・カール Ⓦ |
翻訳者 | 矢崎 源九郎 Ⓦ |
文字遣い | 新字新仮名 |
底本 |
「グリムの昔話(1)野の道編」 童話館出版 2000(平成12)年10月20日第1刷 |
入力者 | sogo |
校正者 | 木下聡 |
公開 / 更新 | 2024-08-19 / 2024-08-18 |
長さの目安 | 約 12 ページ(500字/頁で計算) |
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ある日、お金もちのお百しょうさんが 庭にでて、じぶんの麦ばたけや くだものばたけを、ながめていました。
麦は、すくすく のびています。くだものは、木に すずなりになっています。やねうらのものおきには、きょねん とりいれた麦が、山のようにつまれています。はりが、ささえきれないくらいです。
お百しょうは、こんどは かちく小屋にはいっていきました。なかには、よくふとったお牛もいます。あぶらののっため牛もいます。かがみのように つやつやした馬もいます。
おしまいに、お百しょうは、じぶんのへやにもどってきました。こんどは、そこに、いくつもおいてある 鉄のはこをながめました。そのはこのなかには、お金がはいっているのです。
お百しょうが、こうして そこにたって、じぶんのもっているものを、うれしそうにながめていたときです。きゅうに、とんとんと、はげしく 戸をたたく音がきこえました。
でも、それは、へやの戸を たたく音ではありません。お百しょうの心の戸を、たたく音だったのです。心の戸は、すぐに あきました。
おやっ、だれかが お百しょうによびかける声が、きこえます。
「おまえは、そんなに たくさんのものをもっていながら、それをつかって、うちのものに しんせつにしてやったことがあるかね。
まずしい人たちがこまっているときに、たすけてやったことがあるかね。おなかのへっている人に、じぶんのパンを わけてやったことがあるかね。
おまえは、じぶんのもっているものだけで、まんぞくしていたかね。それとも、もっともっと ほしいと、おもったかね。」
お金もちの心は、たちどころに、こう こたえました。
「わたしは、なさけしらずの ひどい男でした。うちのものにも、いちども よいことをしてやったことは、ありません。まずしい人がくると、そっぽをむいてしまいました。
神さまのことは、かんがえたこともありません。ただ、じぶんのものをふやそうとして、むがむちゅうでした。この世の中のものが、ぜんぶ、わたしのものだったとしても、まだまだ たりないような気もちだったでしょう。」
お百しょうは、この心のへんじをきくと、すっかり こわくなりました。ひざが、がたがた ふるえてきました。もう、たってはいられません。その場に、べったり すわりこんでしまいました。
そのとき、またもや、とんとんと 戸をたたく音がしました。
でも こんどは、へやの戸をたたく音でした。
おとなりの人がやってきたのです。その人はびんぼうでした。ところが、子どもがたくさんいるので、今は、その子どもたちに、ごはんも ろくろく たべさせてやることができない ありさまでした。
(おとなりは金もちだ。しかし、なさけをしらない男だ。それは、おれも ちゃんと しっている。たぶん、おれをたすけてはくれないだろう。しかし、うちの子ども…