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くまの こ
くまの こ
作品ID61539
著者新美 南吉
文字遣い新字新仮名
底本 「校定 新美南吉全集第四巻」 大日本図書
1980(昭和55)年9月30日
入力者かな とよみ
校正者祷りりこ
公開 / 更新2023-07-30 / 2023-07-17
長さの目安約 2 ページ(500字/頁で計算)

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本文より


 かりうどが、ゆきの つもった やまへ、りょうに いきました。うさぎを 一ぴき みつけたので、きの あいだや こみちの うえを、おっかけまわって、やっとの ことで うちとめました。うさぎを ふくろに いれて、そこの きの したで ひとやすみ してから、うちの ほうへ かえりかけました。たにを ひとつ こして、こちらの やまへ きた とき、ぼうしが なくなって いる ことに きが つきました。さっき やすんだ ところに わすれたのかも しれないと おもって そっちを みると、その きの したに だれか いて こちらを みて います。
 かりうどが、こちらから、
「おーい。」
と、いうと あちらからも、
「おーい。」
と、いいます。
 かりうどは、そちらの ほうへ また もどって いきました。
「おーい、おーい」と よぶと、むこうの きの したでも、
「おーい、おーい」と いって、てを ふって います。たにを わたって、だいぶん ちかづいてから、また よんで みましたが、こんどは、なんとも こたえないで、うれしそうに、きの したに はねまわって いました。
 かりうどが きの したに きて みて おどろいた ことには、それは 一ぴきの くまの こで かりうどの ぼうしを かむって いるのでした。かりうどが、あっけに とられて いると、くまの こは、かりうどの ところへ ぼうしを もって きて かりうどに わたすと、やまの おくへ かえって いきました。かりうどは、こころの なかで、くまの こに おれいを いって また、たにを わたって、こちらの やまへ きました。そして、くまの この いった ほうへ、
「おーい。」
と よんで みたら、
「おーい。」
と こたえました。



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