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ドレントン・デン特派員の冒険
ドレントン・デンとくはいんのぼうけん |
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作品ID | 61680 |
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副題 | 01 第一回 黄蛾 01 だいいっかい おうが |
原題 | BEING AN ADVENTURE OF DRENTON DENN, SPECIAL COMMISSIONER: THE YELLOW MOTH |
著者 | ホワイト フレッド・M Ⓦ |
翻訳者 | 奥 増夫 Ⓦ |
文字遣い | 新字新仮名 |
初出 | 1898年 |
入力者 | 奥増夫 |
校正者 | |
公開 / 更新 | 2022-07-02 / 2022-06-27 |
長さの目安 | 約 14 ページ(500字/頁で計算) |
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一
ドレントン・デンが突っ立ってじっと見つめる先に、キューバ海岸があり、炎が点々とちらついていた。夜の帳の下には腐敗と退廃が隠れている。猫は相変わらずネズミをもて遊んでいるが、ひとはとっくに風景に飽きてしまった。そんなことなど欧州にとってはどうでもよい。小麦が一八四〇年代豊作であり続ける限り。
だがドレントン・デンにとって重要だった訳は、自分が有名な従軍記者であるからだ。新聞種が砂丘の先、ポート・インディゴにあり、肝をつぶす恐怖と驚愕が出来していた。
ポート・インディゴに住むスペイン人は次第に困窮し、撤退に追い込まれ、混沌と邪悪が支配するようになった。デンは血なまぐさい恐怖をルポする魂胆だが、停泊するアメリカ艦隊から、誰一人上陸してはならないと厳命されていた。
というのは奇妙な話が逃亡者から伝わり、湾を越えて封鎖艦隊へ達したからだ。悪名高いドン・メクドナがポート・インディゴにアジトを築いた由。そこで王様然と振る舞い、島のごろつきどもを従えている。
早晩この混血の暴君、吸血鬼は米国に捕らえられ、すぐに銃殺されるだろう。運命論者、快楽主義者のメクドナは時の許す限り花々を摘み放題だ。
現在を楽しめ。この奇怪な混血児が新大陸の鼻先で悪臭を放っている。ゴミ山で生まれる華麗な昆虫の中でも、メクドナ以上に派手な奴はいない。
奴が何者か、どこから来たか、誰も知らないし、気にもかけない。紛れもなくキューバの毒気の中で成長した。ポート・インディゴにあるカゲスの廃宮殿に陣取り、傭兵や妖婦を身辺に集めている。
以上全てドレントン・デンが集めた情報は現地人から得たものだが、この現地人はメリランド戦艦まで泳いできて、翌朝、死際に艦上で奇妙な話を口走った。それがメクドナと黄蛾だ。でも、なぜ黄蛾なんだ。どうやら黄蛾と口走ったのは、ポート・インディゴが新たな天罰、つまり黄蛾で荒廃した為らしい。
暗闇の覆いの下に、すごいネタがあり、新聞の将来を左右する。明らかにデンの任務はそこへ向かっている。権威とか就業規則に、生来の特派員は無頓着だ。噂の黄蛾に会いに行くつもりだし、新たな疫病神をこの目で見てやる。
鮫なんか、くそ食らえ。砂丘までたった一キロだ。デンは舫い綱を伝い、密かに脂まみれの海に降りた。ヘルメットの中にはノートと拳銃を忍ばせた。運が良けりゃ、求める全てを得て、夜明け前に帰艦し、サクソン艦隊司令長官に全く悟られないだろう。
ということで、この筋金入りのバーモント州生まれの男は、しなやかで引き締まった痩身の、まるで野生猫であり、砂丘に向かって泳ぎ始めた。鮫が一番気になる。
『有名な従軍記者、惨死』
いい見出しだ。こんな特大見出しを決めつつ、自らの死亡記事を考えていたころ、つま先が砂に着いた。
ついにポート・インディゴだ。欧州人は当地に何年も足を踏み入れていない。こ…