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ドレントン・デン特派員の冒険
ドレントン・デンとくはいんのぼうけん
作品ID61814
副題03 第三回 放火団
03 だいさんかい ほうかだん
原題BEING AN ADVENTURE OF DRENTON DENN, SPECIAL COMMISSIONER: THE FIRE BUGS
著者ホワイト フレッド・M
翻訳者奥 増夫
文字遣い新字新仮名
初出1900年
入力者奥増夫
校正者
公開 / 更新2022-09-18 / 2022-08-26
長さの目安約 20 ページ(500字/頁で計算)

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本文より



 ドレントン・デン特派員がニューヨークポスト紙の編集室へぶらりやってきた。両手をノーフォークジャケットに突っ込み、口端に巻煙草を噛み、捨てる気などさらさらない。
 相手のお偉方は短い煙管をくわえ、上着もチョッキも着てない。でもペリグリン・プライド編集長は大物だ。いつかは社長になれるかも。だが、好きなのはこの世で一番洗練された新聞を牛耳ることだ。
「やあ、戻ったか」
 と編集長が声をかけた。
 デンが割り込んで、
「キューバからです。高くつきましたけど、面白い記事を二本持ってきました。費用検査はまっぴらですよ」
 斜にかぶった汚い藁帽が左目にかかっている。
「金なんかくそくらえ。ネタさえ持ってくればいい。とにかく戻って嬉しい。あの犬は君のか」
 デンがうなずくと、指さす方に、もじゃもじゃの牧羊テリア犬が椅子の近くで丸まっていた。
「名前はプリンス。話す以外何でもできます。我々より優秀ですよ。で、仕事は?」
「はっきり言えば、度胸と勇気がいる。危険は君の大好物だよな。当然放火団は知ってるだろ。知らない? そうか、とにかく承知の通り、ニューヨークの年間火災件数は、まあロンドンの比じゃない。噂を時々耳にするが、悪党組織があって、火付けを請け負い、結果として全焼を傍観し、何も手が打てない。当然、にせ在庫に保険を掛けており、保険会社から金をだまし取る」
「それが本当かどうかの調査ですね」
「おう、そういうことだ。一味の一人がここで喋った。ちょっとした情報にも部長級の五百ドルを払う。安いもんだ」
「なぜ奴はタレこまなかったのですか」
「サツはやる気がないからだ。しかもここへ来れば金になるし、復讐もできる。奴の名はジェイコブ・リスキだが、一味と喧嘩して仕返しをしたかった、つまり我社に暴露してほしい。特ダネの材料がいっぱいあるぞ。君が暴いてくれ」
 デンが食いついた。全ての材料がそろい、ヤマは面白そうだし、何はさておき記者冥利に尽きる。それにデンは冒険の為ならいつでも晩餐を犠牲にする覚悟だ。根っから危険好きの為、特派員の至宝となった。
 ポスト紙が暴露記事に専念するとき、金は二の次だ。藁帽を斜にかぶったままデンが素早く考えを巡らした。
「ドイツユダヤ商人に化けます。にせ在庫と高額保険を仕立ててください。保険業者と掛け合ってうまくやってください。すぐ、リスキを呼んで会わせてください」
[#挿絵]
 一日か二日のうちに準備が整った。ニューヨーク郊外で見つけたユダヤ紳士がドイツへ帰りたがっており、借家と在庫を処分してくれれば謝礼を払うという。
 保険業界は当然、放火団に付け込まれない物件なら契約する。デンの変名であるニコラス・メイヤに対し、高額の保険証券を発行するのみならず、期間を三年に限定し、保険料を全額要求し、領収書を切った。
 デンは新しいお店を数日ほっといた方がいいと…

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