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作り直し親方
つくりなおしおやかた
作品ID62474
原題Mastro Acconcia-e-guasta
著者カプアーナ ルイージ
翻訳者田原 勝典
文字遣い新字新仮名
入力者田原勝典
校正者
公開 / 更新2023-12-24 / 2023-12-08
長さの目安約 14 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

 昔あるところに、粗末な店を構える年寄りの木工職人がいました。仕事道具といえば、のこぎり、きり、かんな、のみ、金づち、やっとこ、それに仕事台だけで、その他の物は何一つありませんでした。
 働き者で、よく作り直しのための古物が持ち込まれたことから、作り直し親方と呼ばれていました。客の要望に沿って、戸口をばらして箱と小机とたんすの開き扉に作り変える、といった具合です。そのためののりとくぎは、客の方で買って来なければなりません。
「どうして、作り直し親方になったんだね?」
「さあ、どうしてだかな」
 使い残したくぎは客に返し、のりは返さずわきへのけておきます。
「どうして、作り直し親方になったんだね?」
「さあ、どうしてだかな」
 そう答えては、たばこを一服吸い込むのでした。
 実入りが少ないというのに、親方は、まるで王子さまのようにぜいたくな暮らしをしていました。一体、どこにそんなお金があったのでしょうか?
 ある朝、親方はいつものように店に買い物に行きました。
「肉屋さん、この牛ヒレ肉はいくらだね?」
「そいつは、わしらの口には入らんよ、作り直し親方。王さまの食卓に上るのさ」
「わしにも、同じ口があるわい!」
 店のあるじたちは、いつも親方をからかって、わざとそう言わせるよう仕向けるのでした。すると、周りから歓声が上がります。
「いいぞ、作り直し親方!」
「魚屋さん、このチョウザメはいくらだね?」
「そいつは、わしらの口には入らんよ、作り直し親方。王さまの食卓に上るのさ」
「わしにも、同じ口があるわい!」
 すると、周りから歓声が上がります。
「いいぞ、作り直し親方!」
 そして親方は、肉、魚、チーズ、サラミ、野菜、果物などのおいしい食べ物を山のように買って帰るのでした。
「だれが、そんなにたくさん平らげるんだい、作り直し親方?」
「わしと、せがれたちだよ」
「おや、息子たちがいたのかい?」
「いるとも。のこぎり、かんな、のみ、金づち、やっとこ、それにきり、こいつが末っ子だ」
 すると、人々は笑っていいました。
「みんなでたんとお食べよ、作り直し親方!」
 店に戻ると、食材を入れたかごを隅に置いて、遅くまで我を忘れて働きます。
「夕飯の時間じゃないか、作り直し親方?」
「台所で、用意してくれてるよ」
 日が暮れるとすぐに、作り直し親方は、店の奥に引っ込んで戸口にしっかりとかんぬきをかけます。
 するとどうでしょう、皿がガチャガチャとぶつかり、グラスがチンチン音を立て、銀食器やナイフがこすれる音がして、家の中ではまるで盛大な晩餐の準備がなされているかのようです。そしてしばらくすると、笑い声とわめき声の中、作り直し親方が大声を張り上げます。
「行儀よくしろ、のこぎり! ……気をつけろ、のみ! わしはびんを壊すところだったぞ! ……よく見ろ、汚れるじゃないか、やっと…

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