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怒髪
どはつ |
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作品ID | 62687 |
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副題 | 怪奇シリーズその9 かいきシリーズそのく |
原題 | The Black Flame |
著者 | ワインバウム スタンリー・G Ⓦ |
翻訳者 | 奥 増夫 Ⓦ |
文字遣い | 新字新仮名 |
初出 | 1939年 |
入力者 | 奥増夫 |
校正者 | |
公開 / 更新 | 2024-11-29 / 2024-11-27 |
長さの目安 | 約 217 ページ(500字/頁で計算) |
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登場人物
コナー 死刑囚
エバニイ 女魔術師
エバン 父
ルース 不倫女
森の妖精 黒髪緑眼
ホランド 学会設立者
テラン 施設修理者
マーティン 不死発見者
ワキン 帝王
マーガレット 怒髪
ジャン 工場技師
モンメルチ 祖父
メリア 母
エナ 金髪少女
マリス 黒髪美人
マギー 王女
ソラ 女給
メリミー 冬眠者
ホメロ へぼ詩人
サヴァン 詩人
[#改ページ]
第1章 代償と結果
コナーはまさに死ぬ寸前だった。刑務所教戒師のけだるい声で、次第に意識が遠のき、気分が沈んだ。死刑囚には全てがもうろうとして、はっきりしない。ほんの10分で電気椅子に送られて、極限の代償を払わされる。その理由はかっとなって男をなぐり殺したからだ。
コナーは精力的に生き、活気があり、健康で、若干26歳の優秀な若き技術者、これから死出に旅立とうとしている。だが、そんなことなど気にも留めなかった。眼に写るのは、死刑囚独房の灰色石壁と、冷たい鉄格子。同様に明確な事実は、ズボンの脚部に切れ目が入れられ、頭頂部に禿げを剃られたことだ。
死刑囚のコナーが強く思い知ったのは、身辺が完璧に整備されている。これから去ろうとする世界は堅牢でびくともしない。近づく死刑執行人の足音が遠くで重く響いてきた。
独房の扉が開き、教戒師が訓戒をやめた。反射的にコナーは祝福を受け入れて、おとなしく両側の執行人に両腕をつかまれ、最後の歩みを自ら踏み出した。
依然として無関心状態のまま、電気椅子に座らせられ、体を固定され、電気端子を取り付けられた。聞こえたのは、立会人のかすかなざわめきと、新聞記者がせわしなく走らせる鉛筆の音。記事の形容詞が想像できよう。
『冷血殺人者』
『自らの運命に平然』
まるで第三者の出来事のようだった。
ただ、だらんと待った。あっという間に苦しまず死ねるのは、なによりありがたい。刑務所長が合図したのさえ分らなかった。一瞬青い光が音もなく走った。それからは……何もない。
これが死だ。ゆっくりと厳粛に漆黒の穴を通り、無限という永遠の流れに漂う。
平和だ、ついに、平和、静寂、休息。
だが、この感覚は何だ。遠くかすかに光りが見え、星のようにまたたく感覚は? 果てしない時間が経ち、光の点滅が止み、安定し、気に障るようになった。次第に気づいた事実は、自分が存在しており、何だか未知の状態にある。感覚と記憶が蘇り、これらをなんとか組み立てて、1個の考える存在になった途端、体の痛みと苦痛を感じた。
甲高い声がして、新鮮な空気が当たった。再び自分の身体を自覚した。静かに、動かず、疲れ果てて、横たわっている。だが死んじゃいない、どれくらい寝ていたのか。
再び甲高い声がしたので、閉じた瞼を…