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イーダちゃんのお花
イーダちゃんのおはな
作品ID62693
原題Den lille Idas Blomster
著者アンデルセン ハンス・クリスチャン
翻訳者大久保 ゆう
文字遣い新字新仮名
入力者大久保ゆう
校正者
公開 / 更新2024-04-02 / 2024-03-28
長さの目安約 17 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

「かわいそう、あたしのお花がかれちゃってる!」っていったのは、イーダちゃんって子。「ゆうべはすっごくきれいだったのに、今は葉っぱもみんなぐんにゃり。どうなってるの?」って、その子は、ソファのところにいた大学生のお兄さんにきいた。だって、その子はお兄さんがだいだい大好きでね、お兄さんはなによりもすてきなお話ができて、おもしろい切り絵も作れたんだ。たとえば、ハートのなかにおどり子が入ってるのとか、花とか大きなおしろとかで、とびらがあけしめできたり。きさくな学生さんだったんだ!「お花さん、どうして今日は具合が悪そうなの?」ってもう一回きいて、それからすっかりしおれたお花のたばを、まとめてお兄さんに見せた。
「あれあれ、知らないの?」っていったのは学生さん。「お花さんは夜のあいだ、ダンスパーティに行ってて、だからくたくたなんだよ!」
「でも、お花さんはおどりなんてできないよ!」って、イーダちゃんはいう。
「できるよ。」って、学生さんはいってね、「暗くなって、ぼくらがみんなねむりにつくとね、あたりで楽しそうにぴょんぴょんするんだ。くる夜もくる夜もパーティをするんだよ!」
「子どもはパーティに行っちゃダメなの?」
「行けるよ。」って学生さんはいってね、「ちっちゃなカモミールも、スズランだって!」
「いちばんすごいお花がおどってるのはどこなの?」
「たまに、門の外へ出て、あの大きなおしろのそばまで行くよね。あそこは王さまが夏のあいだお住まいにするところで、そこにはすてきなお庭があって、お花がさきそろってる。そうそう、白鳥もいたよね。パンくずをやったら、こっちへ泳いでくる。あそこで、ほんとのダンスパーティをやるんだ、ほんとだよ!」
「あたし、きのうママといっしょにお庭へお出かけした!」ってイーダはいってね、「でも、葉っぱはぜんぶ落ちちゃってて、お花なんてこれっぽっちもいなかったよ! どこにいるの? 夏のときは、あたし、たあくさん見たのに!」
「おしろの中にいるんだ。」っていったのは学生さん。「いいかい、王さまとおともが全員そこから町のほうへお引っこししたら、もうすぐさま、お花さんたちはあっというまにお庭からおしろのなかへかけこんで、遊ぶんだ。見せたかったなあ! なかでもいちばんきれいな二本のバラが、おくのイスにすわってね、王さまとおきさきさまってわけ。まっ赤なケイトウはずらっとわきによって、ならんでおじぎして、こちらは宮づかえの人たち。――で、とびきりすてきなお花だけが集まってね、それで大きなダンスパーティをひらいて、スミレは小さな見習いの軍人さんってことになってて、ヒヤシンスやクロッカスとおどっては、おじょうさん、なんて声をかけるんだ! チューリップや大きめの黄色いユリは、そうだね、おばさまがたで、人がうまくおどれるよう、パーティがうまくいくよう、とりはからうんだ!」
[…

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