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作品ID | 62694 |
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副題 | ハリー・クラーク幻想詩画集・抄 ハリー・クラークげんそうしがしゅう・しょう |
原題 | The Year’s at the Spring |
著者 | ウォルターズ レティス・ドイリー Ⓦ |
翻訳者 | 大久保 ゆう Ⓦ |
文字遣い | 新字新仮名 |
入力者 | 大久保ゆう |
校正者 | |
公開 / 更新 | 2024-12-25 / 2024-12-25 |
長さの目安 | 約 7 ページ(500字/頁で計算) |
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時は春、
日は朝、
朝は七時、
片岡に露みちて、
揚雲雀なのりいで、
蝸牛枝に這ひ、
神、そらに知ろしめす。
すべて世は事も無し。
――ロバアト・ブラウニング/上田敏訳「春の朝」
[#挿絵]
羊飼いの女 アリス・メネル
歩む彼女――わが喜びの貴婦人――
群れ従える羊飼いの女よ。
率いる羊は内心そのもの。純白に保ち、
転げ落ちぬよう護っている。
花かぐわしい丘にて羊に餌をやり、
抱き寄せては寝入らせる。
めぐる彼女――母なる丘と明るくも
暗い谷間を、危なげなく深く。
宵にはあのあたたかいふくらみのうちに
清らかな星々が出でることだろう。
歩む彼女――わが喜びの貴婦人――
群れ従える羊飼いの女よ。
見失わぬ彼女――そのささやかな想いを抱き、
晴れ晴れと走り抜け跳び越えてゆく。
いと思慮深く善良だからこそ
魂を揺るがせまいとする彼女。
歩む彼女――わが喜びの貴婦人――
群れ従える羊飼いの女よ。
[#挿絵]
春 ウィリアム・ワトソン
春よ春、
こたびも少女の笑みを。
そのせつなの
のちに少女の涙を!
春よ、どうかわが耳に。
愛しの君にことごとく
わが喜憂を伝えし折には。
春よ春、
こたびも黄金の笑みを。
ただせつなの
のちに黄金の涙も。
[#挿絵]
ゆりかごの歌 サロージニー・ナーイドゥ
香辛料の木立から
お米の畑を抜け
蓮の浮かぶ小川を越えて
あなたのために運びゆく、
露と雫に濡れながら
ささやかな楽しい夢を。
目をおつむり 愛しい子、
自然のホタルが何匹も
魔法の木をめぐり飛ぶ。
あなたのために
ヒナゲシからくすねてきたよ、
ささやかな楽しい夢を。
かわいいお目々 おやすみね、
金色の光につつまれて
あなたのまわりで星空がきらめく。
やさしく撫でて
あなたにじかに届けたい、
ささやかな楽しい夢よ。
[#挿絵]
あとすこしで! クイーニ・スコット=ホッパー
ちゃんとは見れてないんだけど、
森の原っぱで妖精さんのおどるとこ。
あそこの樫の木のうろの裏に
ずらっと草の輪っかが並んでて。
でも、その樫のかげに隠れてたら
あの日は見えそうだったの、あとすこしで!
ちゃんとは見れてないんだけど、
夕暮れの海に人魚の上がってくるとこ。
じめじめの浜辺は日暮れの空で
真っ赤にそまったりしてて。
でも――こっそり、岩場のあいだに――
あの夕べは見えそうだったの、あとすこしで!
ちゃんとは見れてはないんだけど、
こわいゴブリンが納屋に出てきたり
そこの木箱の薄暗い物かげから
頭をぴょこんと出したりするとこ。
でもあのとき――ママが目を上げたりしなけりゃ、
見えそうだったの、あとすこしで、あとすこしで!
[#挿絵]
塩沼地から漏れ聞こえるには ハロルド・モンロー
水精さんよお、そのビー…