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緑の怪物
みどりのかいぶつ
作品ID62767
原題Le Monstre Vert
著者ネルヴァル ジェラール・ド
翻訳者高野 敦志
文字遣い新字新仮名
入力者高野敦志
校正者
公開 / 更新2026-05-22 / 2026-05-17
長さの目安約 8 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

[#挿絵]
悪魔の館

 昔、「ヴォヴェールの悪魔」と呼ばれた、パリの最も古い住人の一人についてお話ししよう。そこから、「ヴォヴェールの悪魔のところだ!(とんでもなく遠いところだ)」とか「ヴォヴェールの悪魔のところに行っちまえ!(とっとと失せろ)」といった慣用句が生まれた。つまり「シャンゼリゼ(あの世)に逝っちまえ!」ということである。
 門番たちは普通、非常に遠い場所を指して、「蛆虫(ヴェール)の悪魔のところへだ!」と言う。頼まれた用事には、手間賃をはずんでもらわねば困るという意味である。しかし、それはパリの人々には馴染みの他の言い方と同様に、さらに誤った崩れた言い回しなのである。
 ヴォヴェールの悪魔は、何世紀もの間住み着いた、紛れもないパリの住人である。ソヴァル、フェリビヤン、サント=フォワ、デュロールといった歴史家が、長々と濫行について語ったところを信用すれば、の話ではあるが。
 その悪魔は最初、ヴォヴェールの館に住んでいたようである。そこはリュクサンブールの外れ、天文台の並木道の向かい、アンフェール(地獄)通りにあり、今ではラ・シャルトルーズの陽気な舞踏場が建っている場所である。
 その館は不吉な評判があり、一部が取り壊されて、廃墟はシャルトルー会修道院の付属となった。その修道院で対立教皇(注記)ブノワ十三世の甥に当たるジャン・ド・ラ・リューヌが、一四一四年に亡くなった。ジャン・ド・ラ・リューヌは、ある悪魔との関係を疑われていた。それはヴォヴェールの古い館に取り憑いた霊だったらしい。封建時代の建造物には、ご存じの通り、それ固有の霊がいたのである。
 歴史家はこの興味深い側面に関しては、正確なことは何も伝えていない。
 ヴォヴェールの悪魔はルイ十三世の時代に、ふたたび人々の口の端に上るようになった。
 古い修道院の残骸で作られた一軒家から、かなり長い間、夜な夜な大きな音が聞こえた。持ち主は何年も不在のままだった。それが隣人をひどく怖がらせた。治安代官(注記)に通報すると、捕吏を数名送ってきた。
 グラスのカチカチいう音に交じって、けたたましい笑いを耳にした兵士たちは、どれほど魂消たことだろう。
 贋金造りが酒盛りしているのかと、最初人々は思い込んだ。騒がしさから一味の人数を想定し、増援を求めに行った。
 しかし、一隊では十分ではないという判断が、またもや下された。捕役は誰一人として、配下らを巣窟に誘導しようとはしなかった。そこからは一軍勢の喧噪が聞こえるようだった。
 ようやく、朝方になって、十分な兵力が到着した。家の中に突入したが、何も見つからなかった。
 太陽が闇を追い払ったのである。
 日がな一日、捜索は行われた。どうやら音は、この地区の下にあるとされる地下墓地(カタコンベ)からするらしかった。
 突入する準備をしていたが、捕方が手筈を整えてい…

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