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青空のリスタート
あおぞらのリスタート
作品ID698
著者富田 倫生
文字遣い新字新仮名
底本 「青空のリスタート」 ソフトバンク出版事業部
1992(平成4)年9月30日
初出「パソコン・マガジン」ソフトバンク出版事業部、1990(平成2)年1月号から1992(平成4)年3月号
入力者富田倫生
校正者富田倫生
公開 / 更新1997-08-26 / 2014-09-17
長さの目安約 357 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

本書の履歴

『青空のリスタート』は、一九九二年九月三十日付けで、ソフトバンクから紙の本として出した。
 一九九〇年一月号から一九九二年三月号にかけて、同社の『パソコン・マガジン』に「インサイドウォッチャー」と題して連載していたコラムを、まとめたものだ。
 当時の私は、コンピューター関連企業のスタッフにインタビューして、方向付けを探るといった記事をたくさん書いていた。編集部が用意した「インサイドウォッチャー」という連載タイトルには、人にまつわる企業の内幕話を書いて欲しいというライターへの期待が現れている。

 その後の私の道筋に、大きな影響を与えた病気と向き合わされたのは、「インサイドウォッチャー」の連載中だった。「WindowsはMS―DOSの暗黒に一条の希望の光をさすか」という原稿のはちゃめちゃぶりには、「今までの流儀は今後一切まかりならぬ」と言い渡された際の逆上がよく現れているように思う。

 病が表に顔を出すと、体が動かなくなった。従来の構えでは、書くことにも臨めなくなった。
 このコラムだけを、かろうじて書き続ける時期が長く続き、書籍化が決まってからも、各項への言い訳がなかなか用意できなかった。
 そんな中、ようやくまとめた本書の後書きで、私は少し違った書き方を見つけたように思う。

〈勢い〉を失った後の目で読み返してみると、それまでの原稿にはところどころに、ライターという肩書きに引きずられたような無理を感じる。
 そのきしみが、本書の後書きにはないように思う。
 弱い者が、弱いままに書いた言葉が、波紋のように静かに広がった印象を受ける。
 ここできっと、私は何かを捨て、何かを得たのだろう。


[#改ページ]




前書きに代えて

 高校の一年後輩だったI君が人生の再スタートを切るに当たっては、パーソナルコンピューターが相当大きな役割を演じたように思う。このおかしな機械があの時期に登場してこなければ、I君の沈滞はもう少し長く続いたのではなかろうか。
 私達が高校生活を送った一九六○年代後半、世界中を学生運動の嵐が吹き荒れていた。地方の国立高校で進学希望者の多かった〈我が母校〉も、その嵐から無縁ではなかった。
 こうしたお祭り騒ぎに一度身をやつしてしまうと、その後も何となく腰の落ち着きが悪くなる。立派に更生した連中も確かに多いのだが、どうもこの時期にすっかり人間がひねくれてしまったと思われる輩も少なくない。くだんのI君は、そうしたひねくれ組の中でも、よじれ度においてなかなか徹底したものがあった。
 数学には飛び抜けて強かったI君だが大学には行かず、思うところあって警察学校に入り、結婚、出産のニュースで我々を驚かせる。卒業後は当然のごとく警察官の道には進まず、電話取り付け工事の職に。しばらくはおとなしく子育てにいそしんでいたものの、今度は山岸会に…

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