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聖三稜玻璃
せいさんりょうはり
作品ID731
副題02 聖三稜玻璃
02 せいさんりょうはり
著者山村 暮鳥
文字遣い旧字旧仮名
底本 「山村暮鳥全集 第一巻」 筑摩書房
1989(平成元)年6月9日
入力者泉井小太郎
校正者富田倫生、泉井小太郎
公開 / 更新2000-01-31 / 2019-01-10
長さの目安約 10 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

[#ページの左右中央]


太陽は神々の蜜である
天涯は梁木である
空はその梁木にかかる蜂の巣である
輝く空氣はその蜂の卵である。
       Chandogya Upa.[#挿絵][#挿絵].[#挿絵].


[#改ページ]
[#ページの左右中央]


こゝは天上で
粉雪がふつてゐる……
生きてゐる陰影
わたしは雪のなかに跪いて
その銀の手をなめてゐる。


[#改ページ]


囈語

竊盜金魚
強盜喇叭
恐喝胡弓
賭博ねこ
詐欺更紗
涜職天鵞絨
姦淫林檎
傷害雲雀
殺人ちゆりつぷ
墮胎陰影
騷擾ゆき
放火まるめろ
誘拐かすてえら。


大宣辭

かみげはりがね
ぷらちなのてをあはせ
ぷらちなのてをばはなれつ
うちけぶるまきたばこ。
たくじやうぎんぎよのめより
をんなのへそをめがけて
ふきいづるふんすゐ
ひとこそしらね
てんにしてひかるはなさき
ぎんぎよのめ
あかきこつぷををどらしめ。


曲線

みなそこの
ひるすぎ
走る自働車
魚をのせ
かつ轢き殺し
麗かな騷擾をのこし。




みきはしろがね
ちる葉のきん
かなしみの手をのべ
木を搖る
一本の天の手
にくしんの秋の手。


だんす

あらし
あらし
しだれやなぎに光あれ
あかんぼの
へその芽
水銀歇私的利亞
はるきたり
あしうらぞ
あらしをまろめ
愛のさもわるに
烏龍茶をかなしましむるか
あらしは
天に蹴上げられ。


圖案

みなそこに壺あり
壺のなかなる蝙蝠は
やみよの紋章
ふね坂をのぼり
朧なる癲癇三角形
くされたる肉にさく薔薇
さてはかすかな愛の痙攣。


妄語

びおろんの胴の空間
孕める牝牛の蹄

眞實なるものには、すべて
或る一種の憂鬱がある。

くちつけのあとのとれもろ
麥の芽の青

またその色は藍で
金石のてざはり

ぶらさがつた女のあし
茶褐で雪の性

土龍の毛のさみしい銀鼠
黄の眩暈、ざんげの星

まふゆの空の飛行機
枯れ枝にとまつた眼つかち鴉。


烙印

あをぞらに
銀魚をはなち
にくしんに
薔薇を植ゑ。


愛に就て

瞳は金貨
足あと銀貨
そして霙ふり
涕垂らして
物質の精神の冬はきたつけが
もういつてしまつた。


青空に

青空に
魚ら泳げり。

わがためいきを
しみじみと
魚ら泳げり。

魚の鰭
ひかりを放ち

ここかしこ
さだめなく
あまた泳げり。

青空に
魚ら泳げり。

その魚ら
心をもてり。


[#挿絵]FUTUR

まつてゐるのは誰。土のうへの芽の合奏の進行曲である。もがきくるしみ轉げ廻つてゐる太陽の浮かれもの、心の日向葵の音樂。永遠にうまれない畸形な胎兒のだんす、そのうごめく純白な無數のあしの影、わたしの肉體は底のしれない孔だらけ……銀の長柄の投げ鎗で事實がよるの讚美をかい探る。

わたしをまつてゐるのは、誰。

黎明のあしおとが近づく。蒼褪めた…

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