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![]() あきのよる |
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作品ID | 7931 |
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著者 | 宮本 百合子 Ⓦ |
文字遣い | 新字新仮名 |
底本 |
「宮本百合子全集 第二十九巻」 新日本出版社 1981(昭和56)年12月25日初版 |
初出 | 「宮本百合子全集 第二十九巻」新日本出版社、1981(昭和56)年12月25日 |
入力者 | 柴田卓治 |
校正者 | 土屋隆 |
公開 / 更新 | 2009-03-30 / 2014-09-21 |
長さの目安 | 約 1 ページ(500字/頁で計算) |
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月そそぐいずの夜
揺れ揺れて流れ行く光りの中に
音もなく一人もだし立てば
萌え出でし思いのかいわれ葉
瑞木となりて空に冲る。
乾坤を照し尽す無量光
埴の星さえ輝き初め
我踏む土は尊や白埴
木ぐれに潜む物の隈なく
黄朽ち葉を装いなすは
夜光の玉か神のみすまるか
奇しき光りよ。
常珍らなるかかる夜は
[#挿絵]燿郷の十二宮
眼くるめく月の宮
瑠璃の階 八尋どの
玉のわたどの踏みならし
打ち連れ舞わん桂乙女
うまし眉高く やさめの輝き
長袖花をあざむけば
天馳つかい喜び誦し
山祇もみずとりだまも
ともに奏でん玉の緒琴 箏の笛
妙なりや秋の夜
心ゆく今の一とき
久遠劫なる月の栄え
讚えんに言の葉も得ず
いずのみお我辺かこむ。