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禹貢製作の時代
うこうせいさくのじだい
著者
文字遣い旧字旧仮名
底本 「内藤湖南全集 第七巻」 筑摩書房
1970(昭和45)年2月25日
初出「東亜経済研究」1922(大正11)年2月発行、第六巻第一号
入力者はまなかひとし
校正者菅野朋子
公開 / 更新2001-09-21 / 2014-09-17
長さの目安約 12 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 支那古代の經濟事情を研究するに就いて、尚書の禹貢が重要なる史料であることは勿論のことである。それ故近頃學者の此研究に力を致す人が追々と出來てゐるやうである。而るに禹貢が如何なる時代に於て作られたかといふことを先づ決めなければ、その内容に關する研究は往々にして沙上に樓閣を築いたと同樣になる恐がある。禹貢は尚書の中で夏書の部類に入つて居るので、普通これを夏の時代の史官が書いたと考ふるのが從來の説である。或ひは更に微細なる點まで區別して、篇首の三句と篇末の二句は夏の史官の辭ではあるが、その中の詳細なること、即ち治水の本末、山川草木、貢賦、土色、山脈、水脈、五服、四至、等の事項は史官が知り得べき處でないから、禹が天子に奏した事柄を史官が之を藏して居つたのに潤色を加へて本となつたのだといふ樣なことを宋儒が唱へた。これ等のことを眞に決する爲には、第一、禹其人が實在の人物であるか、或ひは單に神話中の英雄に過ぎないか、もし實在の人物とするもその當時に果して文字があつたか、文字があつたとしても斯かる雄篇大作を爲すべき程文化が進んで居つたか、等の問題を決めなければならぬのであるが、これは支那の上古史全體に亙る問題であつて、單に禹のことのみを以て之を決めるのは甚だ不便である。今はそれ等の問題には餘りに觸れずして、專ら禹貢の内容に就いて、その中にある所の材料が果してどれ丈け信用すべきものであるかといふことを判斷し得らるゝ材料を提供して、この問題を研究する人の參考に供する丈けに止めて置かうと思ふ。
 禹貢が含んで居る材料は一、九州及び治水の本末、二、山川草木、三、土色、四、貢賦[#挿絵]包、五、山脈、六、水脈、七、五服、八、四至、に分類することが出來る。然るにこの全體に就きて研究資料を集めるのは仲々困難でもあり隨分長篇を要することゝなるから、今はその中のある部分丈けに止めようと思ふ。
 第一は九州のことである。禹貢の九州は冀州、[#挿絵]州、青州、徐州、揚州、荊州、豫州、梁州、雍州となつて居るが、古書に九州のことを記載したものでは、この外に爾雅及び周禮の職方氏の九州がある。爾雅の九州とは冀州、豫州、雍州、荊州、揚州、[#挿絵]州、徐州、幽州、營州、となつて居つて、禹貢に比べると青州、梁州なくして幽州、營州が多い。周禮の職方氏は揚州、荊州、豫州、青州、[#挿絵]州、雍州、幽州、冀州、并州であつて禹貢に比べると徐州、梁州がなくして并州、幽州が多くなつて居る。從來は禹貢の九州は禹の時代の制度であり、爾雅の九州は殷代の制度であり、職方氏の九州は周代の制度であると解釋して居つたが、この外に尚書に十二州といふものが出て居る。尚書には明かに十二州の州名を擧げてゐないが、禹貢の九州の外に幽、并、營の三州を加へたものだとし、その制度は舜の時の者とせられて居る。禹貢と職方氏との文は初よりその各書にその…

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