えあ草紙・青空図書館 - 作品カード


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遅くはない
おそくはない
著者
文字遣い新字旧仮名
底本 「岸田國士全集20」 岩波書店
1990(平成2)年3月8日
初出「都新聞」1925(大正14)年6月9日
入力者tatsuki
校正者小林繁雄、門田裕志
公開 / 更新2005-10-04 / 2014-09-18
長さの目安約 1 ページ(500字/頁で計算)
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本文より




 畑中蓼坡君、遂に「黒幕万歳」を唱ふ。
 此の「黒幕」が「裸の舞台」を意味するとすれば、こゝに始めて、築地小劇場に対立する新劇協会存在の意義が生れた。
 一つは演劇より戯曲を排除せんとする意図をほのめかし、一つは演劇の本質を戯曲の生命に托さうとする。近代劇運動の此の二つの傾向は日本に於て、今後如何なる消長を示すか正に刮目して観るべきであるが、一方、築地小劇場が容易に「戯曲に代るべきもの」を見出し得ない如く、新劇協会が、果して俳優の演伎のみによつて戯曲の生命を活かすことができるかどうか。
 僕は、畑中君と倶に「黒幕万歳」を唱へる前に、君の耳元に口を寄せて「その黒幕が曲者ですよ」と云ひたい。
 何となれば「黒幕」は時として「裸の舞台」を意味しないのみならず、仮りに「裸の舞台」を意味するとすれば、そは、殆ど常に、日本現代戯曲の最大欠陥を暴露せしめるであらうから。



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