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芸術家の協力
げいじゅつかのきょうりょく
副題――楽壇新体制に備へて――
――がくだんしんたいせいにそなえて――
著者
文字遣い新字旧仮名
底本 「岸田國士全集25」 岩波書店
1991(平成3)年8月8日
初出「会館芸術 第十巻第五号」1941(昭和16)年5月1日
入力者tatsuki
校正者門田裕志
公開 / 更新2010-03-11 / 2014-09-21
長さの目安約 13 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

       一

 翼賛会の文化部と致しましては、実は、現在の楽壇の実状を考へまして、直ちにこれをどうしようといふ風には考へてゐないのであります。申すまでもなく翼賛運動は国民自身の運動となるべき性質のものでありまして、芸術分野といふやうなものも抑々国民生活の中から生れ出たものであり、従つて国民生活の実際の動きからは離れることはできないものであります。特に音楽などは、今日までどういふ歴史の変遷がありましたにしても、結局国民が求め、国民自身が作り出して来たものでありまして、その時代時代の国民生活の中に生れ、よくその生活を反映してゐることは他の芸術以上ではないかと思はれます。現代の音楽に致しましても、また当然国民現在の生活そのまゝが反映されねばならないものと思ひます。
 現在の日本の文化といふものを考へてみますと、特にわれわれが遭遇してゐる今日の重大な時局を思ひ合はせてみますと、そこに甚だ心痛に堪へないものが多々あるやうに思はれます。私としてはすでに十数年来かやうな見解を懐いて来ましたが、特に今日のやうな時期に遭遇しますと、われわれはもはや一刻も猶予ができない、なんとかして国民として誇るに足るやうな現代文化といふものを生み出す力、それをもう今日から準備しなければならない、と思ふのであります。しかも今日からそれを準備するといふことは実は甚だ心細いことであります。文化といふものは明日生み出さうとして即座に明日生み出せるものではないのでありまして、今日の生活の中で遠い将来を考へ、さうして一歩一歩現実に途をつけて行かなければならぬものであります。

       二

 一般に文化の問題を考へますときに、私は現在の日本の状態にはまづ次のやうな四つの弱点が考へられると思ひます。
 まづ第一に、国民生活のうちに現代の文化として誇るに足るやうな要素が浸潤してゐないことであります。これが結局その国民生活の中から、文学とか、芸術とかその他種々の文化機能といふものが十分に育ち、立派な花をつけ、実を結び得ない最大の原因なのであります。それでは、国民生活のうちに、十分の文化的要素が浸潤してゐない原因は何処にあるのかと考へますと、我が民族自体は決してさういふ要素をもつてゐないのではありません。これは全く反対に、われわれの歴史を顧みますと、祖先の生活の中には十分にさういふ文化的要素が浸潤してゐたのでありまして、それが最近の数十年の間にいろいろな形で混乱し、或はそこに空白が出来、また或る場合には自ら頽廃的な傾向をもたどつて来たことがあります。国民生活の実体をよく分析してみますと、その中には伝統的な非常に優れた文化の要素が埋没してゐたり、或はまた非常に高度な西洋文化の破片が散乱してゐたりするのであります。さういふものを尊重し、秩序立て、かつこれに栄養を与へ、さうして一つの新しい現代の日本文化、…

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