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空襲時に於ける興行非常対策について
くうしゅうじにおけるこうぎょうひじょうたいさくについて
作品ID44717
著者岸田 国士
文字遣い新字旧仮名
底本 「岸田國士全集26」 岩波書店
1991(平成3)年10月8日
初出「興行日本 第一巻第一号」1944(昭和19)年9月20日
入力者tatsuki
校正者門田裕志
公開 / 更新2010-06-09 / 2016-04-14
長さの目安約 11 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

 一、警戒警報発令中の興行に関しては、其の期間、劇場、映画館の閉鎖を以て一応の対策と見做し、目下これに従つてゐるのであるが、警報長期に亙る場合、然も早急に解除の見込立たざる情勢下に於ては、各地方官庁に於て適宜必要に応じ、興行場の再開を許可する方針らしいけれども、其の内容及興行方法に就ては、自ら臨時的考慮を加へなければならぬであらう。
 一、空襲を受けた場合、その被害地に於ける興行場の再開に関しては、勿論当局の指示を俟つべきものであるが、興行関係者としては、常に其の動員態勢を崩さず、民心の動向と被害の実情とを察知し、最も敏速に其の機能を発揮して各方面の要求に応へ得る準備を整へておかねばならぬ。
 次に東京都を一例とすれば、直ちに研究実践に入るべき問題は左の通りである。
 1、空襲を予想して準備すべきもの
 イ、劇場、映画館等は直接災禍を免れたとしても、被害現場に近いものは、恐らく罹災者殊に負傷者の臨時収容場として利用されるであらう。
 従つて興行場としての機能を果すことは不可能であるから、かゝる処置が決定されると同時に、所在の機具等で移動し得べきものは、責任者を定めてこれを適当な場所に運搬し、出来ればその場所を仮興行場として直ちに当局の認可を求めておくこと。
 ロ、空襲直後は多少人心興奮し、応急の自衛処置に忙殺されてゐるから、主として音楽、殊に吹奏楽の如きものを街頭へ繰り出す必要があらう。
 これが為には、日本音楽文化協会の組織する各区音楽挺身隊の活躍に期待されるが、この場合、各挺身隊の事務方面を興行関係者が奉仕的に援助し、活動能率を高めることが出来れば最も理想的である。
 ハ、日本音楽文化協会、日本浪曲協会の独自の活動に始まる空襲直後の芸能事業は、更に、演芸各部門を組合せた慰問隊の活動となるであらう。
 この慰問隊は、何人によつて組織され、派遣されるかの問題は、今日から決定しておかねばならぬ。各機関各団体がめいめいの思ひつきによつて、てんでんばらばらの行動をとることは出動者の為にも迷惑であり、重複と空白の出来るおそれも多分にあるから、この統制は或る程度絶対必要である。
 そこで先づ、次のことを今日から提言しておく。
 芸能事業の統制は、東京都は東京都庁がこれに当り、都庁は、警視庁の治安取締を背景として、都庁の委嘱する芸能事業非常対策委員会の手に一切の責任と権限を与へる。
 委員会は、興行協会、芸能会各部会の役職員、並に大政翼賛会支部職員を以て組織する。
 委員会は、興行者、興行場主、芸能仲介業者、芸能各部門の動員計画を樹て、都内各地区に於ける仮設興行場(屋内、屋外共に)の実地調査を行ひ、専門家の協力を得て必要なる準備計画を進める。芸能各部門及び芸能会が独自の立場に於て展開せんとする運動、及び公私団体の名義による芸能事業の内容を知悉し、成し得れば予め協議を行ひ…

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