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文学座『夢を喰ふ女』を演出して
ぶんがくざ『ゆめをくうおんな』をえんしゅつして
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「岸田國士全集27」 岩波書店
1991(平成3)年12月9日
初出「学園新聞」京都大学新聞社、1948(昭和23)年3月22日
入力者tatsuki
校正者門田裕志
公開 / 更新2010-07-15 / 2014-09-21
長さの目安約 2 ページ(500字/頁で計算)
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本文より


 野上彰君の「夢を喰ふ女」の戯曲としての新しさは、現代の生活風景の中から、家族としてもつとも崩壊しやすい条件を持つている人間群をとらえて、それを心理的、もしくは思想的角度からではなく、一種の感覚的角度で、それらの人物個々の生態を描いていることと、戯曲の定石としての構成を無視して、人物の絵模様のリズミカルな動きを、そのまま投げ出していることとの二つにあると思う。
 この作品の特色を現在の舞台条件である程度まで示そうとするには、俳優が自分の肉体を、なるだけ現代の人物の中の特殊なタイプにあてはめて、全体の人間群像の生活の中にある官能的なものを強調するという方法によらねばならない。したがつて装置、衣装、メーキャップのようなものは、本来ならなるだけ類型をさけて、様式化したものでやりたいが、現在経済事情その他の理由で演出意図通りのものは得られぬゆえ、その点多少とも手のとどくものの中から選ぶという消極的方法がとられた。
 またこの芝居全体として作者が何を言はうとしているかということについては、観客に理解させるということには重きを置かず、感じさせるということに重きを置くのが、ぼくとしてはいいことだと思い、そこを強調しようとする演出の工夫があつた。言いかえればこの戯曲の上演にはオーケストラの演奏のような、調和と旋律をねらつたものであり、そのつもりで観てもらいたいと演出者として希望するのである。(三月十六日談)



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