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遁げて往く人魂
にげていくひとだま
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「伝奇ノ匣6 田中貢太郎日本怪談事典」 学研M文庫、学習研究社
2003(平成15)年10月22日
入力者Hiroshi_O
校正者noriko saito
公開 / 更新2010-11-19 / 2014-09-21
長さの目安約 1 ページ(500字/頁で計算)
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本文より


 二人の仕事師が某夜夜廻りに往っていると、すぐ眼の前でふうわりと青い火が燃えた。二人は驚いて手にしていた鳶口で、それを敲こうとすると、火の玉は吃驚したように向うの方へ往った。
 二人は鳶口を揮りながら追っかけた。そして、数町往ったところで、その火の玉は唯ある巷へ折れて、その突きあたりの家の櫺子窓からふわふわと入ってしまった。と、家の中から苦しそうな呻きが聞えて来た。それと同時に年とった女の声がした。
「お爺さん、これお爺さん、何をそんなに魘されてるのだよ」
 すると老人の声で、
「ああ怕かった、乃公が街を歩いてると、何をかんちがいしやがったのか、二人の仕事師が、だしぬけに鳶口を持って追っかけて来たのだから、命からがら逃げて来たのだよ」
 と云った。



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