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地方の青年についての報告
ちほうのせいねんについてのほうこく
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「論理とその実践――組織論から図書館像へ――」 てんびん社
1972(昭和47)年11月20日
初出「青年文化」1947(昭和22)年11月
入力者鈴木厚司
校正者染川隆俊
公開 / 更新2008-03-20 / 2014-09-21
長さの目安約 5 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 十万の労働者が月十銭の会費で、労働文化協会を組織しているんだというと、誰でもほんとか、といって驚く。広島県ではこの夢のような組織が、十一月で一年の誕生日を迎えようとしている。
 この協会が夏期大学をやろうとして、二十一名の大学教授連を二十二カ町村へ送り込もうと計画した時は、何か私は、大海戦にでもぶつかるように腹の底で煮えるものがあった。
 計画の噂さが村から村へ伝わると、いろいろの青年が私のところへやって来た。瀬戸内海の小さな田島の漁村から二名の青年がやって来た。そして、私達の計画の中の平野義太郎、羽仁五郎をよこしてくれという。
「青年のメンバーは何人位いるんだ」「今のところ二十五名です」という。しかも、一コースの六名の講師三日間をソックリよこせといってきかないのである。少し無茶な話なのである。しかも、鰯が来襲したら聴衆はなくなるというのである。それでも、「私達漁村に先生達が一週間位いて研究して下さるべきでしょう」といって承知しないのである。
 私は「ようし、漁村の青年組織を一度実験の中にぶち込んでやろう」と考えたのである。「よし。講師の費用はこちらが全部持ってやるから、講師にうんと魚を喰わしてくれ」
 この言葉に青年は、文字通り蹶起したらしい。蓋をあけてみると、四百名の男女の青年が見事に三日間の講座を持ち、講師の費用も意気揚々と持って来たのである。四百名の村をこぞっての青年達が、村を完全に支配して、女の子は料理を、青年は組織を、と動く有様を講師達は帰って、実に愉快そうに話して聞かすのであった。それはどんな祭りよりも、盛んで、青年のものであり、男女が聴いたこともない真理の激しさに胸をときめかしながら、一つの組織の中に融けることは、実に青年達にとっては一つの驚きでもあったらしい。
 隣の村がそれに参加しない。その青年達への軽侮は、農漁村が未だ経験したことのない正しい競争への誇りでもあるのである。その島は毎土曜日のレコード・コンサートと講演を私に申込んで来ている。
 それは実に楽しいことである。しかし、かかることが淡々と行なわれると思ったら大間違いである。実に血みどろな封建ボスとの闘いの均衡の中で行なわれているのである。青年達が、アトラスのように、土をもち上げようとした喘ぎの一つ一つの現象なのである。
 二十二カ町村の中から、鞆も、呉も脱落した。米がないからと断わって来たから、農村に一握りカンパをして、五升の米をやるといっても、出来上らなかった。数千の労働者がいても出来ない街もある。二十五名でも出来る村もある。それは激しい闘いであり、一つの村で勝ったり、一つの村で敗れたりしているのである。
 農村では勝敗の分け目は、バクチを打つ青年のパーセンテージで定まるのである。今日読書会に出た青年が、明日バクチを打つかもしれないのを防ぎ止めるところに、指導青年の苦心がある…

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