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少年に文化を嗣ぐこゝろを
しょうねんにぶんかをつぐこころを
著者
文字遣い旧字新仮名
底本 「少年文學 圖書 第十四號 臨時増刊」 岩波書店
1950(昭和25)年12月5日
入力者鈴木厚司
校正者染川隆俊
公開 / 更新2007-12-01 / 2014-09-21
長さの目安約 2 ページ(500字/頁で計算)
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本文より




 大塚金之助博士に或雜誌記者が、博士の一生に最も感銘深かった記憶は何でございますかとたずねた。
 博士は次の樣に答えられたそうである。
 博士の少年の頃、圖書館へ行って、本を要求したとき、館員が、部厚い本を持ち出して來て、未だ少年の博士に、その本を差出したそうである。
 そのずっしり重い本を受取ったときの深い感激は、今、尚博士の胸の中に殘っているとの事である。これが、博士一生を通じての最も感銘深い瞬間であった。
 博士が、その受けられた手の重みの中には、世界の文化遺産の重みが、同時に音もなく、博士の全身にかゝってゆくところのものがあったに違いない。
 文化を嗣ぐこゝろが、この本を通して、博士の一生を支配するまでに、深い影響をあたえ、常に記憶の中に、博士はその重みを掌の中に感じつゞけられているかも知れない。博士が、今、日本文化史の中に持たれている位置を思いあわせて、少年の日の讀書が、いかに、民族の文化に重大な關連をもつかを、しみじみと感ぜしめるのである。
 岩波書店が、本腰を入れて、少年の文庫に力を傾けられることは、まことに私のよろこびとするところである。數限りない少年が、世界の文化を嗣いだ博士の感銘をくりかえし、博士の跡を追って、日本の學界に伸上ってくる日を、私は、樂しく期待するものである。



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