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現代若き女性気質集
げんだいわかきじょせいきしつしゅう
作品ID4538
著者岡本 かの子
文字遣い新字新仮名
底本 「愛よ、愛」 パサージュ叢書、メタローグ
1999(平成11)年5月8日
入力者門田裕志
校正者土屋隆
公開 / 更新2004-04-26 / 2014-09-18
長さの目安約 4 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

 これは現代の若き女性気質の描写であり、諷刺であり、概観であり、逆説である。長所もあれば短所もある。読む人その心して取捨よろしきに従い給え。

○彼女はじっとして居られなくなった。何か試み度がっている。自分を試して見度がっている。自分の市場価値を。
○「恋など馬鹿らしくて出来なくなりましたわ」と言う。「けれども愛の気持ちだけは失い度くありません。」
○彼女に取ってスピーディで無いものは魅力が無い。それで退屈な時は、せめて街の自動車を眺める。
○「結婚? そうね。出来るだけ我儘をさして呉れる男か、それとも絶対的に服従させられる強い男とならばね。」
○チョコレートを食べられる暇さえある職業だったら職業というものは何という好もしいものでしょう。
○繕った靴下でも穿くときは皺の寄らないように。
○「お習字、生花、お琴、おどり――こういうものに却ってモダニティを感じ、習い度いと思うことはあるけれど、さて、いざとなって見るとね。」
○「何でも断られて顔が赭くなるようじゃ駄目よ。」
○女に向って機嫌を取るような男も嫌いなら、見下げて権柄づくな男も嫌い。
○自分で慥えたものくらい気に入るものはない。洋服でも、お友達でも。
○「お金入れの口を開けてみて、お金が一文も無いときは何だか可笑くって可笑くって、あはあは笑うのよ。たとえ困るのは知れ切っていても、若さのせいか知らん。」
○「訣れの挨拶のお辞儀をしてしまってから、また立話をする。あんなことあたし達にはないわ。」
○「おなかが減いて家へ帰る電車がなかなか来ないときだけ、ちょっとセンチになるわよ。」
○来年あたりのことまで見当がつくけれど其の先は考えても判らない。考えると頭が痛くなるから止す。
○ついでに洗う洗濯物が無くて、お湯にどっぷり入るときくらい嬉しいことはない。
○「どうしてこう心配事が出来ない性分だろう。もっとも心配事があると直ぐレコードをかけて直ぐ紛らかしちまう癖があるんだけれど。」
○牡丹や桜のように直ぐ散ってしまう花には同情が持てない。枯れてもしがみ付いている貝細工草や百日草のような花に却って涙がこぼれる。
○ラグビーを見ているときだけ男の魅力を感ずる。
○子供は少し不器量なのが好き。
○「自分ながら利口過ぎるのが鼻につくから、少し馬鹿になる稽古をしようと思うんだけど。」
○お金があると、ついお友達と円タクに乗ってしまって。
○大概な事は我慢が出来るけれど。鈍感なものだけはトテモ堪らない。
○ジャズの麻痺、映画の麻痺、それで大概の興味は平凡なものに思える。始終習慣的に考えているのは「何か面白いものは無いか知らん。」
○「一生のうち一度だけ、巴里は死ぬほど行って見度いわ。」
○フレッシュの苺クリーム、ブライトな日傘、初夏は楽しい。
○折角ハイキングに行っても、帰って来て是非銀座へ寄らねば何となく物足り無い。
○偉…

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