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迷彩
めいさい |
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作品ID | 47317 |
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著者 | 上村 松園 Ⓦ |
文字遣い | 新字新仮名 |
底本 |
「青眉抄・青眉抄拾遺」 講談社 1976(昭和51)年11月10日 |
初出 | 「大毎美術 第十八巻第十一号」1939(昭和14)年11月 |
入力者 | 川山隆 |
校正者 | 鈴木厚司 |
公開 / 更新 | 2008-11-19 / 2014-09-21 |
長さの目安 | 約 5 ページ(500字/頁で計算) |
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この間私はある方面から質のいい古い唐紙を手に入れましたので、戯れに興味描きを試みまして、知合いの人にも贈ったりしました。唐紙の古いのは、ガサガサした塵埃が脱けているような気がして大そう筆の運びがいいように思います。紙もそうですが、画絹も質のよし悪しで、仕上がった後に画品への関係がよほどあるように思います。画絹の質は、人によっていろいろ好き嫌いがあるのでしょうから、一概には言えないと思いますが、私は西陣のものを用いることにきめています。東の絹は質がしゃんとしていますし、それに色も大そう白いのですから、見つけはちょっと佳いようですけれど、使ってみると何かごそついて私にはどうも描きにくいのです。西陣の絹は色も少し黄黒いようですが、用いて見て肌が細かで、画の仕上がりがいいように思います。
しかし、絹を先方から持ちこまれて、自然それに画を描かなければならないことが間々あります。そういう時には、やはりその絹地が先方の好みによるものだろうと思いますので、自儘に西陣のと取りかえるのもどうかと考えまして、そのまま用いますが、性に合わない絹へ描くことは、筆を執るものとして難儀なことの一つです。しかし絹がどうあろうと、作家としては、粗末に描く気などはもちろんありませんけれど、仕上がりについて何処か自然ぴったりしない点などあるかを心遣います。
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以上のようなことは、心遣いといっても知れたことですが、作家として一とう困ることは、自分の作品でもないものが、自分の作品として世上に持ち回られたり、襲蔵されたりしていることです。こんなことはあってはならない筈なのですが、それが私どもが考えている以上に、実際行なわれているらしいので、そのことには多少気を痛めます。
贋物や疑物ということは、折々耳にしないこともないのですが、それが案外多いらしい様子です。全然きりの私の贋物もありますが、一とう多いらしいのは直し物です。つまり私の作品の、たとえば人物の衣裳の色を濃く塗り直したのや、別の色をかけたのや、酷いのになると、模様を書きこんだのやがあります。それをよく箱書してくれといって持って見えます。そんな時に私が、それを発見することになる訳なのです。ですから、こんな機会に発見するのは知れた数なのですが、そんなことになって方々持ち回られたり、また所蔵されたりしているのが、幾らあるか分りません。
箱書に持って見える人は、恐らく、他から手に入れたものに違いありませんが、そんな直し物などとは知らずに持って来られるのでしょう。また知っていたら持って来られもしないだろうと思います。
ついこの間も、ある方が松篁の作品を持って来られて、箱書を頼んで帰られたのですが、あとで松篁がその作品を箱から出して見ますと、作品は確かに松篁のものに違いはないのですけれど、画いてある白桔梗の下に、…