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雲間寸観
くもますんかん
作品ID48138
著者石川 啄木 / 大木 頭
文字遣い旧字旧仮名
底本 「啄木全集 第十卷」 岩波書店
1961(昭和36)年8月10日
初出「釧路新聞」1907(明治40)年1月、2月1日
入力者蒋龍
校正者阿部哲也
公開 / 更新2012-04-28 / 2014-09-16
長さの目安約 10 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

雲間寸觀

大木頭
◎二十三日の議會は豫報の如く所謂三派連合の氣勢の下に提出せられたる内閣不信任の決議案の討議に入り、小氣味よき活劇を演出したるものの如く候。同日午后一時十分開會、諸般の報告終りてより首相の施政方針演説あり、續いて松田藏相より豫算編制に關する長々しき説明ありたる後、憲政本黨の澤代議士より政府の中心何處にあるやとの質問出で首相は政府の中心に政府あり、現政府は上御一人の御信任を負ひ、且つ斯くの如き大政黨を有せりと答へて傲然と政友會の議席を指さし、それより二三の質問ありて後、税法整理案其他の日程に移り、何れも特別委員會附托となり愈々當日の最大問題たる決議案の日程に入る時に午后三時前五分
◎議長は先づ書記をして決議案を朗讀せしむれば拍手は先づ傍聽席の一隅より起り島田三郎氏は提出者の一人として急霰の如き拍手の裡に登壇し例の長廣舌を揮つて民黨聯合軍が勇敢なる進撃の第一聲を揚げ今日の問題は決して黨派の關係感情の問題に非ず、去れば政友會の諸君も衷心を欺かず賛同せよと喝破して降壇せんとするや政友會の院内總理元田肇氏は島田氏に質問ありと叫び君の辯舌が餘りに巧妙なる故趣意の存する所を知るに苦しむ。詰る所現内閣を信任せずとの意に歸する乎と述べしに島田氏は唯靜に然りと答へて微笑しつゝ拍聲手裡に壇を下り、それより元田氏の熱心なる駁論ありしも屡々民黨より嘲笑をあびせかけられたるは實に氣の毒なりし由に候
◎元田氏に續いて大同派の臼井哲夫氏登壇し余等の決議案は島田氏等のそれと多少異なる所なきにあらざれども現内閣不信任と云ふ點に於ては其目的を同うす故に此決議案に賛成すと述べて本論に入らむとせしに、スワこそ一大事民黨三派連合の事實上に成立したりとて、政友會の議席は少なからざる騷擾を始め、森本駿氏は走せて書記官長席に赴き何事か談じ、元田氏また發言を求めて何事か爲さんと企てたるも遂げず遂に財政委員會席に赴き原内相と共に一時場外に退出せる等形勢刻一刻に切迫する間に臼井氏降壇、横井(政)加藤(憲)竹越(政)の諸氏亦騷然たる動搖の間に激烈なる辯論を交換し、憲政本黨の大石正巳氏亦熱心なる賛成演説を試み、立川雲平氏の皮肉なる駁論あり、少なからず民黨の諸將を激昂せしめたる由に候
◎此時松田藏相發言を求めて登壇し内閣の總名代と云つた樣な格にて聯合軍の矢表に立ち島田臼井諸氏に一矢を酬ゐたる後、昨年七八月頃までは増税せず募債せずと宣言し居りしを今になつて増税案を提出したるは不信義なりとの決議案の骨子に對し今や内外の經濟共通となれる時代に際しては世界經濟市場の景況を基本として財政の計畫も亦之に準ぜざるべからざるを以て到底一二年の未來をも豫想する能はず畢竟増税を非とするは道理なきものなりと撃卓勵聲して降壇したる態度は意氣甚だ軒昂、眼中反對者なきものの如かりし由に候。斯くて長谷場純孝氏の提議にて討論終結の動…

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