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人間の悲哀
にんげんのひあい |
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作品ID | 48142 |
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著者 | 石川 啄木 Ⓦ |
文字遣い | 旧字旧仮名 |
底本 |
「啄木全集 第十卷」 岩波書店 1961(昭和36)年8月10日 |
入力者 | 蒋龍 |
校正者 | 阿部哲也 |
公開 / 更新 | 2012-05-05 / 2014-09-16 |
長さの目安 | 約 1 ページ(500字/頁で計算) |
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人間の悲哀とは、自己の範圍を知ることである。生れ落ちた時、私は何も知らなかつた。その時何の悲しみがあつたらう。經驗と教育とは日一日と私の、自己及自己以外の事物に關する知識を廣くし、深くした。――私は日一日と、自己の範圍といふものを一劃々々知つてゆく樣になつた。
何の自由、何の領土が人間にある? 自己の範圍といふものは、知れば知る程小さくなつてゆく、動きのとれぬものになつてゆく。
常に何らかの努力をせねばならぬ人間の運命を、私はしみ/″\と痛ましく思ふ。