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沙上の夢
さじょうのゆめ
作品ID49170
著者野口 雨情
文字遣い新字旧仮名
底本 「定本 野口雨情 第一巻」 未来社
1985(昭和60)年11月20日
初出河原の雨「国粋」1921(大正10)年10月、梅の実「婦人界」1922(大正11)年7月、春の鳥「少女倶楽部」1923(大正12)年1月、鶫「小説倶楽部」1921(大正10)年6月、憂心「週刊日本」1922(大正11)年10月、狐(原題 きつね)「青年」1923(大正12)年1月、枯れ田「青年」1923(大正12)年1月、おけらの唄(原題 お螻の唄)「現代」1921(大正10)年6月、星の数「かなりや」1922(大正11)年6月、十五の春「趣味と生活」1923(大正12)年1月、蘆枯れ唄「大阪朝日新聞」1921(大正10)年7月3日、榧の木「日本詩集 一九二二版」1922(大正11)年3月、港の時雨「良婦之友」1922(大正11)年12月、後姿「小説倶楽部」1921(大正10)年10月、西瓜畑「小説倶楽部」1921(大正10)年8月、五月雨「婦人界」1922(大正11)年5月、夕の月「新興文壇」1921(大正10)年4月、葛飾の夏(原題 己の家 十、夏)「都会と田園」銀座書房、1919(大正8)年6月、恋のかけ橋「小説倶楽部」1922(大正11)年8月、葱「東京朝日新聞」1923(大正12)年1月29日、唄「東京朝日新聞」1923(大正12)年1月15日、矢車草「かなりや」1921(大正10)年10月、岡の上(原題 村の平和)「枯草」高木知新堂、1905(明治38)年3月、有明お月さん「かなりや」1922(大正11)年3月、うづまき「かなりや」1922(大正11)年8月、熱い涙(原題 熱い涙の歌)「主婦の友」1922(大正11)年11月、両国のあたり「かなりや」1921(大正10)年12月、角豆畑「太陽」1907(明治40)年5月、櫛「東京朝日新聞」1923(大正12)年1月1日、砂の上「東京朝日新聞」1923(大正12)年1月1日、そのころ「婦人倶楽部」1922(大正11)年12月、十七花「婦人倶楽部」1921(大正10)年4月、見はてぬ夢「婦人界」1922(大正11)年8月、煙草の花「小説倶楽部」1921(大正10)年5月、傘の下「日本詩人」1922(大正11)年5月、鴫「日本詩人」1922(大正11)年1月、たそがれ「日本詩人」1921(大正10)年10月、錆「日本詩人」1921(大正10)年10月、帰らぬ人「小説倶楽部」1921(大正10)年7月、片恋(原題 片恋の唄)「家庭界」1922(大正11)年3月、蛙矧の唄「日本詩人」1921(大正10)年11月、畑の土「小説倶楽部」1921(大正10)年12月、昼顔「日本詩人」1921(大正10)年11月、指輪「かなりや」1922(大正11)年9月、憎い女「日本詩人」1922(大正11)年5月、月影「婦人界」1922(大正11)年6月、更けゆく夜「婦人倶楽部」1922(大正11)年2月、昔の月「小説倶楽部」1921(大正10)年4月、馬鈴薯「現代民謡」1922(大正11)年9月、霜夜「主婦之友」1922(大正11)年2月、新開田「小説倶楽部」1922(大正11)年7月、梭の音「婦人界」1922(大正11)年4月、裏戸の音「小説倶楽部」1922(大正11)年6月、甚吾さん「小説倶楽部」1922(大正11)年5月、夢「小説倶楽部」1922(大正11)年5月、胸の糸「婦人倶楽部」1922(大正11)年9月、沙の数「婦人界」1922(大正11)年3月、夜さり唄「小説倶楽部」1922(大正11)年3月、君が名「婦人倶楽部」1922(大正11)年3月、菖蒲の花「国粋」1921(大正10)年5月
入力者川山隆
校正者noriko saito
公開 / 更新2010-05-07 / 2014-09-21
長さの目安約 14 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

[#ページの左右中央]


 なつかしいのは、故郷の土である。「沙上の夢」は、土の詩であり、私の故郷の詩である。
 この集中に収めた作品の多くは、散逸してたづねようのなかつたのを保存して置いてくれた友人藤田健治氏の好意を、私は感謝にたへない。

  大正十二年春
著者


[#改ページ]

沙上の夢


河原の雨

河原の石に
降る雨は
恋しい人の
涙かよ

河原の岸の
笹の葉に
さびしい さびしい
雨が降る

「河原の
雨は
降る
雨は」

かなしい唄も
うたはずに
わかれた人の
涙かよ


梅の実

梅の実の落ちしを見ても
かなしくて
心の底に渦がまく

すぎし月日は
帰らずも
帰つて下さいもう一度

忘れよう忘れようとはするけれど
梅の実の
落ちしを見ても思ひ出す


春の鳥

やさしい鳥よ
春の歌

春待つ鳥の
かはい声

やさしい歌よ
春の鳥

春来る鳥の
かはい歌


村踊の夜

村のお若い衆よ
サツコラサとをどれ
をどれよ!

お月さまから
兎が見てる
兎よ!

若い娘の
顔ばかり見てる
顔をよ!

夜は更けたし
サツコラサとをどれ
サツコラサとよ!


スイッチヨ

スイッチヨ スイッチヨと
大阪の
街のはずれで鳴くスイッチヨ

姉は 筑紫の
長崎へ
妹も 筑紫の
長崎へ

スイッチヨ スイッチヨと
蔦の葉の
上にとまつて鳴くスイッチヨ




今日も鶫が
丘に来て啼いた
おれも泣きたい 鶫の鳥よ

空は乳色に
また日が暮れる

死んで別れた
人ではないし
忘れようとて 忘らりよか


永い月日

永い月日だ
雛芥子の花

枝垂れ柳に
雨さへ降るし

すさみはてたよ
ゆるしておくれ

いつそ田舎に
ゐりやよかつた


異国船

南の風が今日も吹く

筑紫の 海へ
阿蘭陀の
船が来るぞへ
惣八さん

この世は夢だと思やんせ

浪華の 夢は
一夜草
みぢかい みぢかい
一夜草

南の風が今日も吹く

沖に見ゆるは
阿蘭陀の
三角白帆の
異国船

この世は夢だと思やんせ


上野駅

女姿で暮らす
新潟の
港へ帰る旅役者

カラン コロンと
冬の夜の
新潟行の汽車が出る

白粉やけのした顔で
新潟の
港へ帰る旅役者

カラン コロン
カラン コロンと
新潟行の汽車が出る


七つの島

佐渡は 離れ島
隠岐も
離れ島

伊豆の 八丈も
皆離れ島

伊豆に
七つの
父島 子島

七つ子島も
皆離れ島

離れ島ゆゑ
恋しうて
これさ

伊豆の子島の
七つの島はよ


憂心

恋は さめたし
この世は
夢か

恋も 捨てたし
この身も
夢か

なぜに かなしい
この世の
夢よ




霜の降る夜に
狐が
啼いた

尻尾重たかろ
足が
冷たかろ

田甫そこらここら
一晩中
啼いた


蘆の芽

東京の硝子の窓に
雨が降る
しどろもどろに
春の夜の
雨は…

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