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寛政時代の娘納涼風俗
かんせいじだいのむすめのうりょうふうぞく
作品ID49738
著者上村 松園
文字遣い新字新仮名
底本 「青帛の仙女」 同朋舎出版
1996(平成8)年4月5日
初出「京都日出新聞」1916(大正5)年10月24日
入力者川山隆
校正者鈴木厚司
公開 / 更新2009-03-26 / 2014-09-21
長さの目安約 1 ページ(500字/頁で計算)

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本文より




 月蝕は今迄余り多く描かれて居りませんから一度描いてみたいと胸に浮びましたのが動機です。
 あの画は寛政の頃の良家の娘さんの風俗で夏の宵広い庭に降り立って涼を納れて居ります時に「今夜は月蝕だわ……」とふと思い付いて最も見易いように鏡を持ち出して写し取っている所です。空を仰いで眺めているのでは落ち着きがなくて如何にも軽くなりますので、ああして俯向きがちの所を描きましたが、余り夜深になりますと反って凄うなりますから、宵の口で月蝕というものを題にして夏の夕方の納涼気分を現わしただけに過ぎません。
 私の画はモデルは余り用いませんが、只顔の優しい型を取りたいために祇甲の萬龍はんとお久はんを最初に二時間ほど来て貰いまして、顔の形を整えましただけです。これがモデルと言えば先ずそうかも知れません。〈月蝕の宵〉は九月に入ってかかりまして出品間際にやっと出来上りましたばかりで篤と見ている間もないくらいでありました。
(明治四十三年)[#「(明治四十三年)」はママ]



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