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味覚馬鹿
みかくばか
作品ID50005
著者北大路 魯山人
文字遣い新字新仮名
底本 「魯山人の食卓」 グルメ文庫、角川春樹事務所
2004(平成16)年10月18日
入力者門田裕志
校正者仙酔ゑびす
公開 / 更新2010-02-06 / 2014-09-21
長さの目安約 19 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

 美味い不味いは栄養価を立証する。
     *
 天然の味に優る美味なし。
     *
 現今の料理は美趣味が欠如している。
     *
 料理つくるも年齢、食う好みも年齢。
     *
 料理をつくる者は、つとめて価値ある食器に関心を有すべし。
     *
 高級食器、美器をつくらんとするものは、美食に通ずべし。
     *
 栄養価値充分にして美味にあらざるものは断じてない。美味なれば必ず栄養が存する。
     *
 味覚は体験に学ぶ以外に道はない。良体験をもったものは、よい料理ができ、よい味覚がそなわり、幸せであり、美味いもの食いの資格が高い。
     *
 現在、純日本料理はないであろう。
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 料理を味わうにも、三等生活、二等生活、一等生活、特等生活と、運命的に与えられている生活がある。またそれに従って作るところの料理がさまざまである。
     *
 貧乏国になった日本料理、それが生んだ料理研究家の料理、毎日ラジオ、テレビで発表されている料理。これが貧乏国日本の生んだ料理研究であり、栄養料理の考えである。
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 一顰一笑によって愛嬌をまき、米を得んとする料理研究家がテレビに現われて、一途に料理を低下させ、無駄な浪費を自慢して、低級に生きぬかんとする風潮がつのりつつある。
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 もともと日本料理の中で生まれたわけではないから、現今のごとく低級の谷へ谷へと下降しつつある。このあり様は見るに忍びない。内容の重きに注意せざる者は、勢い外表のデザインのみに走る。
     *
 要求する食物に不味いものなしだから腹が空るにかぎる。
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 うかうかと元味を破壊して、現代人は美味いものを食いそこなっている。
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 手をかけなくても栄養も摂れ、美味でもあり、見た目も美しいものを、いたずらに子供を騙すような料理をつくることは、料理人の無恥を物語るものであろう。
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 日本料理といっても、一概にこれが日本料理だと簡単にいい切れるものではない。いい切った後から、とやかくと問題が起こり、水掛論が長びき、焦点がぼけてしまうのが常だからだ。昔もそうだが、近頃ではなお更である。
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 日本人が常に刺身を愛し、常食するゆえんは、自然の味、天然の味、すなわち加工の味以上に尊重するところである、と私は思っている。
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 すべて本来の持ち味をこわさないことが料理の要訣である。これができれば俯仰天地に愧ずるなき料理人であり、これ以上はないともいえる。
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 次が美の問題である。
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 料理も美味い物好き、よい物好き、なにかと上物好き、いわばぜいたく者であってこそ、筋の通った料理が生まれるのである。
     *
 味に自信なき者は料理に無駄な手数をかける。
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