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|  いちじくの葉 いちじくのは | |
| 作品ID | 51309 | 
|---|---|
| 著者 | 中原 中也 Ⓦ | 
| 文字遣い | 新字旧仮名 | 
| 底本 | 「中原中也詩集」 角川文庫、角川書店 1968(昭和43)年12月10日改版 | 
| 入力者 | ゆうき | 
| 校正者 | きりんの手紙 | 
| 公開 / 更新 | 2019-07-17 / 2019-07-09 | 
| 長さの目安 | 約 1 ページ(500字/頁で計算) | 
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夏の午前よ、いちじくの葉よ、
葉は、乾いてゐる、ねむげな色をして
風が吹くと揺れてゐる、
よわい枝をもつてゐる……
僕は睡らうか……
電線は空を走る
その電線からのやうに遠く蝉は鳴いてゐる
葉は乾いてゐる、
風が吹いてくると揺れてゐる
葉は葉で揺れ、枝としても揺れてゐる
僕は睡らうか……
空はしづかに音く、
陽は雲の中に這入つてゐる、
電線は打つづいてゐる
蝉の声は遠くでしてゐる
懐しきものみな去ると。
(一九三三・一〇・八)