えあ草紙・青空図書館 - 作品カード
楽天Kobo表紙検索
地極の天使
じごくのてんし |
|
作品ID | 51320 |
---|---|
著者 | 中原 中也 Ⓦ |
文字遣い | 新字旧仮名 |
底本 |
「中原中也詩集」 角川文庫、角川書店 1968(昭和43)年12月10日改版 |
入力者 | ゆうき |
校正者 | きりんの手紙 |
公開 / 更新 | 2019-04-29 / 2019-03-29 |
長さの目安 | 約 1 ページ(500字/頁で計算) |
広告
広告
われ星に甘え、われ太陽に傲岸ならん時、人々自らを死物と観念してあらんことを! われは御身等を呪ふ。
心は腐れ、器物は穢れぬ。「夕暮」なき競走、油と虫となる理想! ――言葉は既に無益なるのみ。われは世界の壊滅を願ふ!
蜂の尾と、ラム酒とに、世界は分解されしなり。夢のうちなる遠近法、夏の夜風の小鎚の重量、それ等は既になし。
陣営の野に笑へる陽炎、空を匿して笑へる歯、――おゝ古代! ――心は寧ろ笛にまで、堕落すべきなり。
家族旅行と木箱との過剰は最早、世界をして理知にて笑はしめ、感情にて判断せしむるなり。――われは世界の壊滅を願ふ!
マグデブルグの半球よ、おゝレトルトよ! 汝等祝福されてあるべきなり、其の他はすべて分解しければ。
マグデブルグの半球よ、おゝレトルトよ! われ星に甘え、われ太陽に傲岸ならん時、汝等ぞ、讃ふべき[#「讃ふべき」は底本では「讚ふべき」]わが従者!