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夏の夜の博覧会はかなしからずや
なつのよのはくらんかいはかなしからずや
作品ID51893
著者中原 中也
文字遣い新字旧仮名
底本 「新編中原中也全集 第二巻 詩Ⅱ」 角川書店
2001(平成13)年4月30日
入力者きりんの手紙
校正者hitsuji
公開 / 更新2021-04-29 / 2021-03-27
長さの目安約 1 ページ(500字/頁で計算)

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本文より


夏の夜の、博覧会は、哀しからずや
雨ちよと降りて、やがてもあがりぬ
夏の夜の、博覧会は、哀しからずや

女房買物をなす間、かなしからずや
象の前に余と坊やとはゐぬ
二人蹲んでゐぬ、かなしからずや、やがて女房きぬ

三人博覧会を出でぬかなしからずや
不忍ノ池の前に立ちぬ、坊や眺めてありぬ

そは坊やの見し、水の中にて最も大なるものなりきかなしからずや、
髪毛風に吹かれつ
見てありぬ、見てありぬ、
それより手を引きて歩きて
広小路に出でぬ、かなしからずや

広小路にて玩具を買ひぬ、兎の玩具かなしからずや



その日博覧会に入りしばかりの刻は
なほ明るく、昼の明ありぬ、

われら三人飛行機にのりぬ
例の廻旋する飛行機にのりぬ

飛行機の夕空にめぐれば、
四囲の燈光また夕空にめぐりぬ

夕空は、紺青の色なりき
燈光は、貝釦の色なりき

その時よ、坊や見てありぬ
その時よ、めぐる釦を
その時よ、坊やみてありぬ
その時よ、紺青の空!
(一九三六・一二・二四)



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