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|  俳句 はいく | |
| 作品ID | 53521 | 
|---|---|
| 著者 | 萩原 朔太郎 Ⓦ | 
| 文字遣い | 旧字旧仮名 | 
| 底本 | 「萩原朔太郎全集 第三卷」 筑摩書房 1977(昭和52)年5月30日 | 
| 入力者 | kompass | 
| 校正者 | 小林繁雄 | 
| 公開 / 更新 | 2011-07-27 / 2018-10-17 | 
| 長さの目安 | 約 2 ページ(500字/頁で計算) | 
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   ○
五月幟立つ家家の向うに海
   ○
    暮鳥忌
磯濱の煙わびしき年のくれ
  笹鳴
笹鳴の日かげをくぐる庭の隅
笹鳴や日脚のおそき縁の先
   ○
天城ごえ伊豆に入る日や遲櫻
青梅に言葉すくなき別れ哉
   ○
青梅に言葉すくなき別れかな
   ○
冬日くれぬ思ひおこせや牡蠣の塚
   ○
    我が心また新しく泣かんとす
冬日暮れぬ思ひ起せや岩に牡蠣
   ○
ブラジルに珈琲植ゑむ秋の風
枯菊や日日にさめゆくいきどほり
   ○
プラタヌの葉は散りはてぬ靴磨き
冬さるる畠に乾ける靴の泥
   ○
虹立つや人馬にぎはふ空の上
   ○
人間に火星近づく暑さかな
秋さびし皿みなわれて納屋の隅
枯菊や日日に醒めゆく憤り
虹たつや人馬にぎはふ空の上
[#改ページ]
  『遺稿』より
  我が齡すでに知命を過ぎぬ
枯菊や日日にさめゆく憤り
  若き日の希望すべて皆空しくなりぬ
秋さびし皿みな割れて納屋の隅
  鳴呼すでに衰へ、わが心また新しく泣かむとす
冬日くれぬ思ひ起せや岩に牡蠣
  故郷に歸れる日、利根の河原をひとり歩きて
磊落と河原を行けば草雲雀
  わが幻想の都市は空にあり
虹立つや人馬賑ふ空の上
  隱遁の情止みがたく、芭蕉を思ふこと切なり
藪蔭や蔦もからまぬ唐辛子
  晩秋の日、湘南の或る侘しき海水浴場にて
コスモスや海少し見ゆる邸道