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春の来る頃
はるのきたるころ
作品ID53577
著者萩原 朔太郎
文字遣い旧字旧仮名
底本 「萩原朔太郎全集 第三卷」 筑摩書房
1977(昭和52)年5月30日
入力者kompass
校正者小林繁雄
公開 / 更新2011-08-07 / 2018-12-18
長さの目安約 1 ページ(500字/頁で計算)

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本文より


なじかは春の歩み遲く
わが故郷は消え殘る雪の光れる
わが眼になじむ遠き山山
その山脈もれんめんと
煙の見えざる淺間は哀し
今朝より家を逃れいで
木ぬれに石をかくして遊べる
をみな來りて問ふにあらずば
なんとて家路を教ふべき

はやも晝餉になりぬれど
ひとり木立にかくれつつ
母もにくしや
父もにくしやとこそ唄ふなる。
(滯郷哀語篇ヨリ)



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