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受難日
じゅなんび |
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作品ID | 53589 |
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著者 | 萩原 朔太郎 Ⓦ |
文字遣い | 旧字旧仮名 |
底本 |
「萩原朔太郎全集 第三卷」 筑摩書房 1977(昭和52)年5月30日 |
入力者 | kompass |
校正者 | 小林繁雄 |
公開 / 更新 | 2011-08-13 / 2018-12-18 |
長さの目安 | 約 1 ページ(500字/頁で計算) |
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受難の日はいたる
主は遠き水上にありて
氷のうへよりあまた光る十字すべらせ
女はみな街路に裸形となり
その素肌は黄金の林立する柱と化せり。
見よやわが十指は晶結し
背にくりいむは瀧とながるるごとし
しきりに掌をもつて金屬の女を研ぎ
胴體をもつてちひさなる十字を追へば
樹木はいつさいに[#挿絵]轉し
都は左にはげしく傾倒す。
ああ十字疾行する街路のうへ
そのするどさに日輪もさけびくるめき
群集をこえて落しきたるを感じ
いのり齒をくひしめ
受難の日のひくれがた
われつひに蛇のごとくなりて絶息す。