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若き尼たちの歩む路
わかきあまたちのあゆむみち |
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作品ID | 53593 |
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著者 | 萩原 朔太郎 Ⓦ |
文字遣い | 旧字旧仮名 |
底本 |
「萩原朔太郎全集 第三卷」 筑摩書房 1977(昭和52)年5月30日 |
入力者 | kompass |
校正者 | 小林繁雄 |
公開 / 更新 | 2011-08-13 / 2018-12-18 |
長さの目安 | 約 1 ページ(500字/頁で計算) |
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この列をなす少女らのため、
うるはしき都會の窓ぞひらかるる、
みよいまし遠望の海は鳴りいで、
なめいしを皿はすべりて、
さかづきは歩道にこぼれふんすゐす。
こはよき朝のめざめなり、
をとめらのさんたまりやの祈祷なり、
みな少女、
素足あしなみそろへ行く手に、
ちよこれいと銀紙に卷かれ、
くだものは竝木の柵に飾られぬ。
ああ、いづこぞ夢の序樂のぽろねえず、
會社は河岸に涙をひたし、
花店の飾窓つゆにぬれたり、
しばしまたつりがね鳴らむ、
あさまだきにほふ葉影に、
しろじろとかざし泳がせ、
この列をなす少女らあゆむ。
――樂曲風、情景詩――