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決闘
けっとう
作品ID53599
著者萩原 朔太郎
文字遣い旧字旧仮名
底本 「萩原朔太郎全集 第三卷」 筑摩書房
1977(昭和52)年5月30日
入力者kompass
校正者小林繁雄
公開 / 更新2011-08-13 / 2018-12-18
長さの目安約 1 ページ(500字/頁で計算)

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本文より


空と地とに緑はうまる、
緑をふみてわが行くところ、
靴は光る魚ともなり、
よろこび樹蔭におよぎ、
手に輕き薄刃はさげられたり。

ああ、するどき薄刃をさげ、
左手をもつて敵手に揖す、
はや東雲あくる楢の林に、
小鳥うたうたひ、
きよらにわれの血はながれ、
ましろき朝餉をうみなむとす。

みよ我がてぶくろのうへにしも、
愛のくちづけあざやかなれども、
いまはやみどりはみどりを生み、
わがたましひは芽ばえ光をかんず、
すでに伸長し、
つるぎをぬきておごりたかぶるのわれ、
をさな兒の怒り昇天し、
烈しくして空氣をやぶらんとす、
土地より生るる敵手のまへ、
わが肉の歡喜ふるへ、
感傷のひとみ、あざやかに空にひらかる。

ああ、いまするどく鋭刃を合せ、
手はしろがねとなり、
われの額きずつき、
劍術は青らみつひにらじうむとなる。



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