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光る風景
ひかるふうけい
作品ID53601
著者萩原 朔太郎
文字遣い旧字旧仮名
底本 「萩原朔太郎全集 第三卷」 筑摩書房
1977(昭和52)年5月30日
入力者kompass
校正者小林繁雄
公開 / 更新2011-08-13 / 2018-12-18
長さの目安約 1 ページ(500字/頁で計算)

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本文より


青ざめしわれの淫樂われの肉、
感傷の指の銀のするどさよ、
それ、ひるも偏狂の谷に涙をながし、
よるは裸形に螢を點じ、
しきりに哀しみいたみて、
をみなをさいなみきずつくのわれ、
ああ、われの肉われをして、
かくもかくも炎天にいぢらしく泳がしむるの日。
みよ空にまぼろしの島うかびて、
樹木いつさいに峯にかがやき、
憂愁の瀑ながれもやまず、
われけふのおとろへし手を伸べ、
しきりに齒がみをなし、
光る無禮の風景をにくむ。
ああ汝の肖像、
われらおよばぬ至上にあり、
金屬の中にそが性の祕密はかくさる、
よしわれ祈らば、
よしやきみを殺さんとても、
つねにねがはくば、
われが樂欲の墓場をうかがふなかれ、
手はましろき死體にのび、
光る風景のそがひにかくる。
ああ、われのみの、
われのみの聖なる遊戲、
知るひととてもありやなしや、
怒れば足深空に跳り、
その靴もきらめききらめき、
涙のみくちなはのごとく地をはしる。



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