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厩
うまや |
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作品ID | 53604 |
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著者 | 萩原 朔太郎 Ⓦ |
文字遣い | 旧字旧仮名 |
底本 |
「萩原朔太郎全集 第三卷」 筑摩書房 1977(昭和52)年5月30日 |
入力者 | kompass |
校正者 | 小林繁雄 |
公開 / 更新 | 2011-08-19 / 2018-12-18 |
長さの目安 | 約 1 ページ(500字/頁で計算) |
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高原の空に風光り、
秋はやふかみて、
鑛脈のしづくのごとく、
ひねもす銀針の落つるをおぼえ、
ゆびにとげいたみ、
せちにひそかに、
いまわれの瞳の閉づるを欲す。
ここは利根川、
その氾濫のながめいちじるく、
青空に桑の葉光り、
さんらんとして遠き山里に愁をひたす、
あはれ、あはれ、われの故郷にあなれば、
この眺望のいたましさ。
眼もはるにみゆ。
村落の光る厩のうへに、
かがやく愛の手は伸びゆきて、
われの身は銀の一脈、
ひそかに息づき生命はや絶えなんとする。
―九月七日―