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こうしじつでん |
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| 作品ID | 53619 |
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| 副題 | ―室生犀星に― ―むろうさいせいに― |
| 著者 | 萩原 朔太郎 Ⓦ |
| 文字遣い | 旧字旧仮名 |
| 底本 |
「萩原朔太郎全集 第三卷」 筑摩書房 1977(昭和52)年5月30日 |
| 入力者 | kompass |
| 校正者 | 小林繁雄 |
| 公開 / 更新 | 2011-08-19 / 2018-12-18 |
| 長さの目安 | 約 1 ページ(500字/頁で計算) |
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ちちのみの父を負ふもの、
ひとのみの肉と骨とを負ふもの、
ああ、なんぢの精氣をもて、
この師走中旬を超え、
ゆくゆく靈魚を獲んとはするか、
みよ水底にひそめるものら、
その瞳はひらかれ、
そのいろこは凍り、
しきりに靈徳の孝子を待てるにより、
きみはゆくゆく涙をながし、
そのあつき氷を蹈み、
そのあつき氷を喰み、
そのあつき氷をやぶらんとして、
いたみ切齒なし、
ゆくゆくちちのみの骨を負へるもの、
光る銀緑の魚を抱きて合掌し、
夜あけんとする故郷に、
あらゆるものを血まみれとする。
――十一月作――