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作品ID53646
著者萩原 朔太郎
文字遣い旧字旧仮名
底本 「萩原朔太郎全集 第三卷」 筑摩書房
1977(昭和52)年5月30日
入力者kompass
校正者小林繁雄
公開 / 更新2011-08-31 / 2018-12-18
長さの目安約 1 ページ(500字/頁で計算)

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本文より


すべては黒く凍つてゐる
さびしくかたまる岩の上に
みじめに歪んだ松の幹に
景色は凍え、飢ゑ、まづしく光つて叫ぶばかり。

この侘しく灰色なる空の下に
私たちの心はまづしく語り 孤獨になやみて重たくよりそふ
少女よ
あの遠い空の雷鳴をあなたは聽くか
かしこの空にひるがへる
浪浪の高いひびきをあなたは聽くか。

過去よ
ながいながい孤獨の影よ
その影を岩にひきずる
冬の日の薄暗い濱邊に立つて
意味のふかい人生を見る。



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